【2024年問題】時間外労働の賃金アップと時間外労働の上限で給料はどう変わる?
中小企業にお勤めの人に朗報です!働き方改革の施行により2024年4月1日から時間外労働の賃金、つまり残業代がアップします。
毎月楽しみにしているお給料には、残業代や休日出勤に対する賃金が含まれている方は多いと思いますが、時間内残業や時間外残業は、どのように計算されているかご存知でしょうか。
2024年問題と言われる残業代の賃金アップや、残業時間の上限が適用されることでどのような業種が打撃を受けてしまうのか、残業代の計算方法とともに解説していきます。
今の残業代の計算方法は?2024年以降の残業代はどれだけ上がる?
残業すると賃金は25%増しということは社会人のなかで常識と言われるほどの賃金知識ですが、25%増しにならない残業もあることはご存知でしょうか。
ちなみに現在、大手企業に働く方の残業代は50%増しの賃金となっています。中小企業で働く身としては羨ましい限りです。
しかし、嘆くことはありません。2024年4月1日以降は中小企業で働く方も、残業代の賃金アップが待っています。
まずは、残業や休日出勤に対する賃金の計算方法を改めて確認し、2024年4月1日以降の残業代の賃金アップに関して解説していきます。
労働基準法と36協定による時間外労働とは?残業時間の上限はある?
まずは残業代の計算方法を確認する前に、法律で定められている労働時間の制限は何時間かご存じでしょうか。
労働基準法で定められている労働時間
- 【1日】8時間
- 【1週間】40時間
- 【休日】週1日以上
労働基準法で定められている労働時間以上に働かなければならない職場環境の場合は、労働基準法第36条(時間外及び休日の労働)に対して労使協定を結ぶことで、労働時間を延長したり休日出勤をすることが可能となります。
これを「36協定」って言うんやけど知ってた?
言葉は知ってるけど意味は知らんかった。
この36協定によって残業や休日出勤と呼ばれる時間外労働が可能になり、ひと昔前までは労働時間に対する上限は決められていませんでした。36協定で決められた時間外労働までは認められていたということです。
しかし、2020年4月以降は時間外労働時間の上限が、一部の業種を除いて適用されることになり36協定があったとしても上限以上には働くことはできなくなっています。
基本的な時間外労働時間の上限
- 【1ヶ月】45時間
- 【1年間】360時間
とはいえ、どの業種にも繁忙期や決算などで多忙な時期もあり、時間外労働の上限までに業務をこなすということは正直難しいという状況があると思います。
そのため臨時的な時間外労働が認められており、繁忙期や決算、トラブル対処など一時的に労働時間が増えてしまう場合には、一定の条件のもと時間外労働を増やすことが可能となっています。
- 年間の時間外労働が720時間以内
- 月45時間以上の時間外労働が年間6回以内
- 時間外労働と休日出勤労働の合計が1ヶ月に100時間以内
- 2~6ヶ月の平均労働時間が、1ヶ月あたり80時間以内
36協定が締結されていたとしても、基本的には1ヶ月間で45時間以上の時間外労働は認められず、一時的な業務増加であれば一定の条件内であれば労働時間を臨時的な上限まで延長することが可能となります。
これらが2022年現在に定められている労働時間の上限ですが、トラックドライバーや医師など一部分の業種については2024年4月1日まで時間外労働時間の上限に対して猶予が設けられています。
時間外労働の賃金計算は?残業は賃金25%増しとは限らない⁉
残業代は25%増しという社会人の常識は、すべての残業時間に当てはまるわけではありません。
1ヶ月60時間以上の時間外労働があった場合、現行の法律では大企業と中小企業とでは賃金に対する割増率に違いがあります。
《大企業の場合》
- 60時間までの時間外労働に対する賃金は25%増し
- 60時間を超えた時間外労働に対する賃金は50%増し
《中小企業の場合》
- 60時間までの時間外労働に対する賃金は25%増し
- 60時間を超えた時間外労働に対する賃金は25%増し
時間外労働が深夜になると、さらに賃金が25%増しとなるので時間外労働が60時間を超えていた場合には、大企業にお勤めなら75%増し、中小企業にお勤めなら50%増しということになります。
21時から6時までの夜勤やったら、深夜は9時間?
深夜っていうのは22時から朝の5時までやねん。だから7時間の深夜勤務ってことやな。
また、残業という言葉を使うことでよく間違われがちなのが、「残業=時間外労働」と捉えてしまうことです。1週間の労働時間が40時間を超えた場合に初めて時間外労働、つまり残業扱いとなります。
週40時間の労働時間内で残業をするということは、定められた労働時間内で仕事をするという意味での残業となるので、時間外労働に対する賃金の割り増しは適用となりません。
時間内労働なのか時間外労働なのかによって賃金割増が関係するねん。
残って仕事するのは全部残業で割り増しなると思ってたわ。
給料アップする⁉全企業が時間外労働の賃金の割増率を統一!
前述で解説したように、時間外労働に対する賃金の割増率は大企業と中小企業に違いがあります。しかし、2024年4月1日以降は現行の大企業と同様に、中小企業も同じの割増率が適用となります。
もちろん、1ヶ月の時間外労働が60時間を超えた場合にのみ適用されるということになりますが、それでも残業時間が多い業種の方々には嬉しい賃金アップのニュースとなるのではないでしょうか。
- 時間外労働1時間あたり割増率50%
-
1時間あたりの賃金×1.5×時間外労働をした時間数
- 深夜は割増率25%
-
1時間あたりの賃金×1.25×深夜時間の労働をした時間数
- 時間外労働が深夜だった場合は50%と25%の割増率が適用
-
1時間あたりの賃金×(1.25+0.5)×深夜の時間外労働をした時間数
何度も言いますが、2024年4月1日以降に賃金アップが期待できるのは1ヶ月の時間外労働が60時間を超えた場合、超えた時間外労働の時間分が25%増しから50%増しになることにあります。
そもそも残業代が出ない、残業するほど業務がない、残業する気がないという場合には、賃金アップの対象に入ることはできませんので、注意してくださいね。
残業なぁ・・・遠慮するわ。
あたし給料アップする予感!
働けたら・・・の話やな。
休職して間もなく4ヶ月…
休日出勤はどうなる?週に1日しか当てはまらないって本当?
時間外労働の割増賃金は、1週間の労働が40時間を超えた場合に適用されますが、休日出勤にも時間外労働の割増賃金が適用されることをご存じでしょうか。
日本の企業では週休2日制度を設けている企業が多くを占めていますが、実は週休2日といっても労働基準法で1週間の休日は1日と決められているので、休日出勤としての割増賃金を適用するのは週1日で良いとされているのです。
日曜日 | 法定休日 | 休日出勤の割増賃金が対象 |
月曜日 | 平日 | - |
火曜日 | 平日 | - |
水曜日 | 平日 | - |
木曜日 | 平日 | - |
金曜日 | 平日 | - |
土曜日 | 所定休日(法定外休日) | 時間外労働の割増賃金が対象 |
法定休日と所定休日?なにそれ?
法定休日とは、法律で定められた週に1回のお休みのことを指し、所定休日(法的外休日)は企業が週休2日とするために定めたお休みのこととなります。
所定休日(法定外休日)の曜日は企業が決めているので、必ずしも土曜日というわけではなく勤め先によって変わります。
週休2日でも、労働基準法では週1日の休日だけってことやねん。
そうなんや。じゃあ祝日はどうなるん?
企業によって祝日を法定休日にしている場合もあれば、所定休日(法定外休日)としている場合もあり、就業規則などで確認してみればわかると思います。
法定休日と所定休日(法定外休日)の違い
- 法定休日に仕事をすれば休日出勤扱い
- 所定休日(法定外休日)に仕事をすれば時間外労働として残業時間に加算
もし勤めている会社で祝日に対する規約が明記されていなければ、平日と同じ扱いとして給与が支払われることになります。
しかし、勤める人たちのモチベーションを上げるために祝日を法定休日として定めている企業は多いようです。ぜひご自身の勤め先の祝日に対する給与を確認してみてくださいね。
今まで通りには働けない⁉時間外労働の上限で打撃を受ける職種とは?
2024年4月1日以降は労働時間の上限について、猶予を設けられていた業種も先行された企業と同様に、従業員の労働時間の上限を守らなくてはならなくなります。
これが2024年問題とも言われており、業種によっては今まで通り従業員が働けなくなるため、様々な問題に直面することになるとされています。
企業にとって時間外労働に対する割増賃金の支払い以外に、労働時間の上限によって人員確保なども必要とする問題点がありますが、働く側についても上限の猶予が終わる業種の方は今まで通りに働くことができなくなるというリスクが発生します。
時間外労働の上限に対する猶予期間が終わる業種はなに?
働き改革関連法によって時間外労働に上限が設けられたのは、大企業が2019年、中小企業は2020年からとなっていましたが、5年間の猶予期間を設けられた業種が4つありました。
- 建設事業
- 自動車の運転業務
- 医師
- 鹿児島県と沖縄県の砂糖製造業
コロナ過によって多忙に多忙を極めた医師も、2024年4月1日以降は時間外労働の上限を守らなくてはならなくなります。
トラックなどのドライバー業務を行っている方々も猶予期間が終わるわけですが、運転業務を生業とするトラック、・バス・タクシーについては、時間外労働の上限に対する制限はすべて適用されるわけではなく、年間960時間という上限が焦点となります。
年間で960時間やろ?そんなに働かへんやろ?
そう思うやろ?でも結構大変になるねんで。
一部の業種が猶予期間を終える2024年4月1日以降、時間外労働に年間960時間という上限が適用されることで特に問題視されている業種がドライバー業務と言われており、物流2024年問題とされています。
全日本トラック協会でも各物流企業に向けて、時間外労働に対しホワイトな運営を促すようホームページでも詳しく解説されています。
働き方改革関連法による時間外労働の上限において猶予が終わる業種は4つですが、このなかでも特に時間外労働が多いとされている物流業界で働く人に焦点を当てて考えてみたいと思います。
ドライバーは今まで通りに働けない⁉同時に給料が下がるリスクも⁉
ドライバー業務には、トラックやバス、タクシーを運転する方たちとなりますが、この中でも特に長時間労働とされている業種がトラックの運送業です。
運送業の時間外労働が多くなってしまう要因は様々ですが、大きな3つの問題点によって時間外労働が長くなっていると言われています。
- 渋滞や道路状況、コースの変更によって予定する労働時間を大幅に超えてしまう
- 荷物の待ち時間が長くなり、平行して労働時間も増えてしまう
- 運転業務だけでなく荷物を積む業務が加わり、1日の労働時間が増えてしまう
確かに働く時間長いけど、給料が下がるほど労働時間って減るん?
年間の時間外労働時間を960時間以内に収めなくてはならないのですが、いわゆる残業が960時間とされるのは、給料に大きく影響するかという疑問が生まれるのは当たり前ですね。
年間960時間という時間外労働は、1ヶ月あたりにすると80時間です。週休2日で働いた場合、1日あたりの時間外労働はどれくらいになるか計算してみてください。
- 960時間を12ヶ月で割ると、1ヶ月あたり80時間
- 1ヶ月22日の勤務だと3.6時間(3時間36分)
- 1日あたりの時間外労働の平均は3.6時間が限度
1日の勤務時間が8時間を超えた時間分が時間外労働となります。
つまり週休2日で、朝7時から午後6時36分まで働いた場合(休憩1時間含む)には、あっという間に年間960時間の時間外労働が出来上がってしまうということになります。
そう言われたら、もっと仕事の時間長いかもしれんな。
1日あたりの勤務時間が12時間程度あるというドライバーの方は、2024年4月1日以降は、最高でも11時間36分までしか働くことができなくなります。
仮に週1日のお休みで祝日も関係なく働いていた場合には、さらに1日あたりの時間外労働には制限が設けられることになります。
法律の上限でブラックな企業が出ぇへんことを祈るしかない…
さらに2024年4月以降は時間外労働に対する賃金割増が中小企業も対象となるにもかかわらず、時間外労働には上限が設けられることで、従業員が増員され今までと同程度の仕事ができなくなってしまうことに繋がります。
時を同じくして中小企業でも厚生年金への加入が必要おとなる人が増え、フルタイムで働くパートさんも増加すると予測されており、1人あたりの時間外労働は減る可能性もあるのです。
結果的に、いま残業代による給与の上乗せが多い運送業の方の場合、2つの原因が重なり給与が減ってしまう恐れがあるので、仕事量の増減については敏感になっておく必要があります。
- 時間外労働に対する賃金を減らす企業努力が仇に⁉
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会社が利益を上げてくれないと賞与や給与に影響が出てしまうため、会社は経営を安定させるために企業努力が必要となります。
そんな企業努力の中には、時間外労働に対する50%の割増賃金を削減するため、1人あたりの時間外労働を減らすことも含まれます。
結果として、従業員の増加から1人あたりの時間外労働は減らされ、給料が減ってしまうというシステムが出来上がってしまうのです。
- 時間外労働の超過には罰則が設けられ、時間外勤務の上限は必須に⁉
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時間外労働が必要な場合には菅らず36協定が必要となりますが、36協定による時間外労働の上限が運送業の場合は960時間と定められました。
働き手の健康を維持するための働き方改革により、上限を超えた場合には6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金とする刑事罰が適用されます。
企業は刑事罰の存在により、なんとしても時間外労働の超過を避けなければならず、結果として従業員の時間外労働が今までより減ってしまうことに繋がってしまうのです。
運送業を行う企業も人材確保のリスク!2024年問題の対策に悪戦苦闘⁉
運送業務を生業とする企業は、2024年問題に向けて全力で対策を講じているようです。時間外労働の超過を避けるためにできることと言えば、まずは人材確保を避けて通ることはできません。
しかし、近年ではドライバーを職種として選択する人が減り、さらには免許制度の改正によって乗務可能なトラックが限定されるという問題点も発生しています。
こうした背景から、2022年5月より免許制度が改正され大型免許や2種免許の取得による条件が緩和されることとなり、今後の大型免許や2種免許の取得者の増加に期待が高まっています。
俺も大型免許持ってるけど、ブランク長いから大型は怖いわ。Venusちゃんは大型バスも乗ってるけどな。
それやねん。ドライバーを確保するにもリスクがあるねん。
ドライバーを増員することが運送会社として必要となることですが、いくつかのリスクが発生します。それらのリスクに耐えられるかどうかが企業の力を問われることになります。
- 必要な免許保持者の従業員を増員できるか
- 大型初心者やブランクのある免許保持者の育成が可能か
- 労働者に対する福利厚生を構築し離職を防げるか
- 荷積みの時間を削減するための効率向上が可能か
- 納入先での待ち時間を減らすためのシステム構築が可能か
- 時間外労働に対する割増賃金による利益低下に耐えられるか
- 人件費確保のため運賃値上げ交渉が可能か
様々な要因が重なり合い、6万社を超える運送事業者では価格対立が常に行われているなか、人材確保によるリスクに対してどこまでシステムを構築できるかが焦点になると思われます。
時間外労働の減少により給料が下がれば、離職を考える従業員も少なからず発生することでしょう。もし離職率が高くなってしまうと企業としての存続も危ぶまれてしまう可能性も秘めていることになります。
給料が高い会社とか転職とか、いろいろ考えるわな。
利益が減る→給料減る→離職→運営困難っていう負のスパイラルやな。
国民の健康を維持する目的による働き方改革は、特に運送会社には人手不足の要因も重なり苦境に追い込まれる可能性は高くなっており、いまも2024年問題への対策に悪戦苦闘を強いられています。
運送会社で働く従業員も2024年問題を迎えるにあたり、ご自身が働く環境に大きな動きが出てくることは間違いないと思われます。
【まとめ】2024年問題!あなたは給料アップ?それとも給与ダウン?
働き方改革関連法律によって2019年から順次、時間外労働に対する賃金の割増アップや、時間外労働に上限が設けられてきました。
2024年3月末までの猶予が設けられた企業や業種がありますが、2024年4月1日からはすべての企業や業種が適用となります。
- 中小企業も、60時間を超える時間外労働は50%の割増賃金となる
- 建設業や自動車の運転業務、医師、鹿児島と沖縄の砂糖製造業も時間外労働に上限ができる
60時間を超える時間外労働に対する賃金アップに加え、年間の時間外労働時間に対する上限の猶予が終わり、働く人々にとっては大きな影響が出るのではないでしょうか。
残業を多くこなしている人は、残業に対する割増賃金が25%から50%増しになり給料が上がったと喜ばしい一方で、割増賃金を減らそうとする会社の方針や、法律により時間外労働の上限を超えて働けなくなるなど、今までと同じ給料を確保することが難しくなるケースもあります。
2024年問題を迎える前に、ご自身でも自分が働く時間外労働について考えてみるべきだと思います。
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