難しいって本当⁉控除証明の確認方法から生命保険料控除の計算方法までを解説
いまの時代、自助努力が必要な世の中のため多くの方が生命保険や医療保険、個人年金保険などに加入しています。
生命保険に加入している方は、おそらく一度は確定申告で生命保険料控除の計算で苦労した経験があると思います。
確かに生命保険料控除の計算は面倒だと感じるかもしれませんが、受けることができるはずの所得控除を放置してしまうと、所得税や住民税において節税ができず損をしてしまうことに繋がります。
賢く節税をするためにも、ぜひ今から年末調整や確定申告に向けて、生命保険料控除について勉強しておいてください。
生命保険料控除証明書が届いたら大切に保管しよう
いざ年末調整や確定申告の時期となり「必要な控除証明が見つからない!」ということにならないように、毎年10月頃に届く生命保険料控除証明書は大切に保管しておいてください。
年末調整や確定申告において生命保険料控除を利用するためには、控除証明書に記載されている金額をもとに計算する必要があり、生命保険料控除証明書も添付する必要がありますので、必ず保管するようにしておいてください。
控除証明書って、すぐ失くなるねんなぁ。
もし年末調整や確定申告をする際に、生命保険料控除証明書が見当たらないと思ったら、すぐに加入している保険会社に連絡して再発行の依頼をしてください。
最近では各保険会社のWEBから再発行の依頼もできるようになっているので、確認をしてみてもよいでしょう。
生命保険料控除って何のために使う?
つい面倒な生命保険料控除の計算は後回しにしてしまったり、生命保険料控除を利用すること自体を諦めてしまうことが繰り返されているようなことはありませんか?
俺、毎年めんどくさい人やから放置してたで。
ほんまに勿体ないことしてたよな・・・
生命保険料控除の計算が面倒だと感じている方こそ、計算方法を改めて確認する前に生命保険料控除はなぜ使う必要があるのかについて考えてみていただきたいと思います。
少しの生命保険料控除を利用するだけでも節税に役立つ
税金を少しでも減らしたいと思っている方は少なくはないと思いますが、その節税に生命保険料控除が役に立つことをご存じでしょうか。
会社員の場合は源泉徴収税で計算された所得税は、税金を払い過ぎていた場合還付金を受け取ることが可能となる場合もあります。
でも生命保険料控除くらいで、そんな還付金って変わるかぁ?
我が家の旦那くんのように考えている会社員の方がいらっしゃったら、改めて年末調整や確定申告と所得税との関係への理解を深めることで、今後はより一層の節税が期待でき効率よく収入を得ることができると思います。
どれだけ得する?目指すは1つ下の税率のボーダーライン!
税金額の計算のもとになる所得金額のことを理解されている方はよくご存じだと思いますが、その所得金額から差し引くために生命保険料控除を利用します。
控除を使って課税所得を少なくすることで、課税所得に対する税率を1つ下げた税率を目指すことで、節税に繋げることが可能となるのです。
課税所得が200万円だった場合で生命保険料控除について考えてみよう
所得控除となる生命保険料控除を利用した場合と利用しなかった場合で比較して考えてみましょう。
- 控除を利用しなかった場合
-
- 所得金額:2,000,000円・・・≪課税所得金額≫
所得金額から速算表で確認しすると、税率が10%、税率控除が97,500円となります。
生命保険料控除を利用しなかった場合は、支払うべき所得税は102,500円となります。
- 控除を利用した場合
-
- 所得金額:2,000,000円
- 生命保険料控除:120,000円
- 2,000,000円-120,000円=1,880,000円・・・≪課税所得金額≫
所得金額から速算表で確認しすると、税率が5%となります。
比較して頂くと、適用される税率に変化が起きていることがわかりますよね。
- 生命保険料控除を利用しない場合・・・102,500円
- 生命保険料控除を利用する場合・・・94,000円
たった数分の計算で8,500円の違いが出ることがわかりました。
様々な所得控除を利用することによって税率が変わるケースは多く、生命保険料控除などの所得控除を利用することで、このような差額が生まれることになるのです。
でも、変わったからって何かメリットある?税金が少なくなるってことやろうけど・・・
年末調整とか確定申告で還付金が受け取れることに繋がるねんで。
さらに、年末調整や確定申告で計算された所得税は、住民税にも大きく関わることになるので、きちんと所得控除を利用しておくことが大切です。
まじか・・・
生命保険料控除の新制度と旧制度ってなに?
生命保険料控除をよく見てみると新制度と旧制度に分かれて証明額が記載されているはずです。この新制度と旧制度は該当する生命保険などの加入時期によって振り分けられることになっています。
新制度と旧制度では受けることができる控除の合計額が変わります。そのため、新制度と旧制度についての違いを知っておくことが必要となります。
平成24年以降の契約が対象となる新制度
平成24年1月1日以降に締結した契約が新制度に該当します。この日以降に新規で生命保険に加入したり、転換制度を利用して新しい生命保険に加入、特約の付加をした場合もこの新制度に該当します。
また、保険の内容によって保険料が分類され、控除に使える限度額がそれぞれに設定されているので、よく確認しておくことが大切です。
所得税 | 住民税 | |
---|---|---|
一般生命保険料控除 | 40,000円 | 28,000円 |
介護医療保険料控除 | 40,000円 | 28,000円 |
個人年金保険料控除 | 40,000円 | 28,000円 |
一般的な生命保険は、死亡保障・介護保障・医療保障の3階建で保障がセットされています。
このような生命保険に加入していた場合、一般生命保険料控除と介護医療保険料控除に分かれて控除証明書に控除額が記載されているので見落とさないように注意してください。
計算がいっぱいあって面倒やねん・・・
新制度における限度額は、それぞれに4万円となっています。
- 生命保険料控除
- 介護医療保険料控除
- 個人年金保険料控除
3つの控除額をそれぞれ計算し合算した場合の限度額も決められており12万円となっています。
昔から生命保険料控除として存在していた旧制度
平成23年12月31日までに締結した契約が旧制度に該当します。
新規で加入した場合に加え、転換制度によって生命保険の切り替えを行った場合などは新制度に移行している契約や、昔から加入して継続している生命保険のほか、養老保険や終身保険などがこの旧制度に該当します。
所得税 | 住民税 | |
---|---|---|
一般生命保険料控除 | 50,000円 | 35,000円 |
個人年金保険料控除 | 50,000円 | 35,000円 |
こっちの旧制度は何回か計算したことあるわ。
まぁ旧制度は2種類の計算だけやったから、楽やったもんな。
新制度における限度額は、それぞれに5万円となっています。
- 生命保険料控除
- 個人年金保険料控除
旧制度には特約ごとに分類されていませんので、医療保険なども含めて一般生命保険料控除として一括りにされています。
旧制度では、それぞれの限度額を合算した場合10万円が控除額の限度となっています。
新制度と旧制度、そして所得税と住民税の違いにも注意
新制度や旧制度には限度額が決められていますが、その限度額は所得税と住民税によって違いがあることを忘れてはいけません。
所得税の計算で課税所得が少なくなったと喜びたいところですが、住民税を計算する際には各所得控除の金額が下がってしまう所得控除があることを忘れてはいけません。
新制度 | 旧制度 | |
---|---|---|
所得税 | 12万円 | 10万円 |
住民税 | 8万4,000円 | 7万円 |
最近、住民税の非課税世帯の給付金とかあるもんな。
所得税の場合、新制度による限度額は12万円、旧制度での限度額は10万円となっていますが、住民税の計算の際には新制度における限度額は8万4,000円、旧制度の限度額は7万円です。
住民税まで考えると、所得控除において利用する控除は生命保険料控除を含め、少しでも所得控除を利用しておく必要あがあることがわかります。
可能なら住民税のことも考えておいた方が得するで。
控除証明書の適用制度と証明額を確認しよう
生命保険料控除の金額を計算するためには、まず自分自身が支払った保険料を確認する必要があり、その保険料をもとに生命保険料を計算することになります。
適用制度において2つの記載を見間違ってしまうケースもあるので、せっかくの計算が無駄にならないように気をつけてくださいね。
適用制度はどうなってる?新制度それとも旧制度?
前述で解説していた新制度と旧制度が、この適用制度にあたります。
控除証明書を見てみると最初の欄に適用制度と書かれているので、最初に確認するようにしてください。
何枚も控除証明書があると、間違ってしまうケースがあるので要注意やで。
新制度と旧制度は加入している生命保険などの契約日によって適用される制度が違います。
生命保険会社が契約者の混乱を防ぐために控除証明書の作成段階で、契約ごとに適用制度を記載してくれているので自分で調べる必要はありません。
申告額と証明額ってなに?間違うと大変なことになる⁉
控除証明書を確認すると、証明されている金額が2つあることに気づくと思います。
- 【申告額】その年の12月末まで保険料を支払う予定の保険料
- 【証明額】控除証明書発行した時点で確認できている保険料
ポイントは加入している生命保険などが生命保険料控除を利用しようとしている年の12月末まで継続しているかどうかとなります。
確定申告の場合は12月31日を過ぎているので間違うことは少ないですが、会社員など年末調整で生命保険料控除を利用しようとする場合、12月末までに解約の予定がないかも考えておく必要があります。
- 解約の予定がなく12月末まで継続するなら12月末時点の申告額
- 解約済みだったり払込満了の場合は払込額の証明額
12月末まで継続しているのに証明額を選択して生命保険料の計算をしてしまうと、控除証明書発行時までの金額となるので損をしてしまうことになります。
生命保険料控除を計算する順番は?控除額を計算しよう
では実際に、計算しながら生命保険料控除について知っていただきたいと思います。
- 一般生命保険料の新制度と旧制度をそれぞれ計算する
- 「新制度」介護医療保険を計算する
- 個人年金保険料の新制度と旧制度をそれぞれ計算する
- 計算した結果、1~3の控除額を確認する
- 控除額すべての合計額を見て、控除上限額なのか実質控除額なのかを確認する
- 上限額か実質額のどちらか少ない方を記入
めっちゃ長いな・・
そんなに難しくないから頑張ろう!
新制度と旧制度に分けてそれぞれ計算しよう
計算に入る前に控除証明書を確認して、新制度と旧制度に分けてそれぞれの保険料の合計を出しておく必要があります。
それぞれの合計を振り分けるパターンは最高で5通りができるはずです。
- 新制度の生命保険料
- 新制度の介護医療保険料
- 新制度の個人年金保険料
- 旧制度の生命保険料
- 旧制度の個人年金保険料
新制度と旧制度においてそれぞれの保険料ごとに控除額を計算することになるので、これだけ多くのパターンになってしまうのです。
それでは新制度の各保険料の合計額を新制度の計算式に当てはめて、生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料でそれぞれ計算してみましょう。
申告額または証明額 | 生命保険料控除額の計算式 |
20,000円以下 | 申告額または証明額の通り |
20,000円超~40,000円以下 | (申告額または証明額)÷2+10,000円 |
40,000円超~80,000円以下 | (申告額または証明額)÷4+20,000円 |
80,000円超 | 一律40,000円(限度額) |
次に、旧制度に該当するそれぞれの保険料の合計額から生命保険料控除額を計算します。
旧制度は一般生命保険料と個人年金保険料の2つしかないので、新制度に比べて計算が楽になると思います。
申告額または証明額 | 生命保険料控除額の計算式 |
25,000円以下 | 申告額または証明額の通り |
25,000円超~50,000円以下 | (申告額または証明額)÷2+12,500円 |
50,000円超~100,000円以下 | (申告額または証明額)÷4+25,000円 |
100,000円超 | 一律50,000円(限度額) |
限度額の違いに注意しておいてくださいね。
新制度と旧制度では、控除額の限度額に違いがある
生命保険料控除において従来の旧制度から新制度が加わった背景には、控除額の増額が目的とされていました。
そのため、旧制度において控除額の限度額が10万円だったことに対し、新制度における控除額の限度額は12万円となっています。
つまり、新制度における生命保険料控除額12万円が利用できる最大の生命保険料控除の金額となり、新制度と旧制度を合わせて12万円以上であったとしても限度額12万円以上の利用はできません。
生命保険料控除の最高額は12万円ってことやな。
新制度と旧制度を記入、最後は限度額と比較を忘れずに
生命保険料控除額を記載する場合、年末調整や確定申告ではそれぞれ支払った保険料の合計を記入する欄がありますので、忘れずに記入するようにしましょう。
記入するのは控除額ではなく、最高5パターンとなる新制度3つと旧制度2つについて支払った保険料を記入します。
計算する前に書いておくと、ややこしくならへんで。
生命保険料控除の欄で初めて計算した結果を記入することになります。こちらはそれぞれ5パターンに振り分けて計算した控除額を記入することになります。
支払った保険料の合計額5パターンと、計算した控除額の合計5パターンの記入ができたら、最後は利用する生命保険料控除額を記入することになります。
計算した控除額を合計したらええねんな。
限度額に気をつけなあかんで。
- 新制度の控除額の限度が3つの保険料控除それぞれに4万円で最高12万円
- 旧制度の控除額の限度額は2つの保険料控除でそれぞれ5万円で最高10万円
- 新制度と旧制度を合算した控除額が最高12万円
新制度と旧制度の控除額を足した控除額と、限度額である12万円の控除額を比べ、少ない方が利用できる控除額となります。このようにして確定した控除額がご自身で利用できる生命保険料控除というわけです。
- 合計した控除額<12万円・・・控除額は12万円
- 合計した控除額>12万円・・・控除額は合計した金額
なんとなく少ない方っていうのが気にいらんわ・・・
【まとめ】節税のためにも生命保険料控除の計算に挑戦しよう
多忙の毎日を送っていると、年末調整や確定申告の準備における生命保険料控除は確かに計算が面倒かもしれません。
しかし所得控除として利用できる生命保険料控除は、所得税や住民税に大きくかかわり節税のポイントと言っても過言ではありません。
- 控除証明書は大切に保管
- 少しの控除であっても、適用税率が変わり所得税や住民税の節税が可能
- 保険料控除は最高5パターンの計算と上限額の確認
- 新制度、旧制度における控除額の上限額の確認
- 計算した保険料控除額と上限額を比べて少ない方が適用
生命保険料控除は平成24年以降、新制度と旧制度に分かれたことによってさらに計算方法が複雑になり面倒だと感じるようになってしまいました。
しかしポイントを押さえて計算すれば、そこまで難しいわけでもありません。
俺も今度の年末調整で生命保険料控除の計算やってみるわ。
よし。頑張れ!
今まで年末調整や確定申告で面倒だと思い、生命保険料控除を利用せず税金面で損をしていませんでしたか?
所得税や住民税を少しでも軽減させるためにも、次回の年末調整や確定申告では生命保険料控除を利用できるよう早めの準備をするように心掛けておいてください。