2024年1月から始まる『新NISA』は何が変わる?NISAの仕組みや変更点を徹底解説
「人生100年時代」という超高齢化社会となった日本では、自分自身で長期的な資産形成が必要となり、NISAの仕組みに興味を持つ人も増えてきました。
少額投資非課税制度として2014年1月に導入されたNISAは、上限額や加入年齢など制度改正を繰り返しながら現在に至っています。そして2024年1月、新たな制度改正によって『新NISA』に生まれ変わることになっています。
今回の制度改正の注目すべき点は、なんといっても『非課税枠』ですよね。
この記事では、2024年1月からはじまる『新NISA』について解説していきます。まだNISAを利用したことがない人もNISAを知ることができるよう、『現行のNISA』と『新NISA』をそれぞれ詳しく解説していきます。
気になっててんけど、あんまりよく知らんねんなぁ・・・
旦那くんと同じ意見だという人も心配ありません。この記事を読めば、NISAのポイントを押さえて学べるので、ぜひ初めての方も『新NISA』に挑戦してみてくださいね。
『現行のNISA』と『新NISA』の変化を図解で解説!
『NISA』が新旧でどのように変化するのかは、現行のNISAと新NISAの内容を詳しく知る必要がありますが、まずは一目で変更される部分を知りたいという人は多いことでしょう。
俺、それだけでいいわ。全く内容は知らんけど・・・
NISAの詳細を知ることは大切ですので、のちほど1つずつポイントを解説したいと思います。
しかし、まずは新旧のNISAを図解で見て見ましょう。
『現行のNISA』と『新NISA』を並べて比較してみると、図のようになります。※画像をクリックすると大きく表示
ところで、新しいNISAに興味を持って今ご覧いただいていると思いますが、どんな理由で『新NISA』を知りたいと思いましたか?
- 非課税枠が増えると聞いて、メリットがあると思った
- 年間の上限額が増えると聞いて、たくさん投資できると思った
興味を持ったポイントは様々だと思いますが、『現状のNISA』から『新NISA』へは、どのように変化するのかを理解することが、NISAによる資産運用を上手に活用できるポイントでもあります。
俺、NISAのことなんも知らんで・・・
日本の株式や投資信託への投資金を売却すると、利益を得たり、配当を受け取ったりと資産が可能ですが、受け取った利益には税金が課せられて、実質の手取りは減ってしまうのに、所得が合算されて所得税や住民税が上がってしまいますよね。
『NISA』とは、これらの運用を一定の制限のもとで利用することで、売却益や配当への税率が非課税となる仕組みの『少額投資非課税制度』なのです。
一定の制限があるからこそ、NISAの仕組みをよく理解しておくことが大切なのです。
これまでの『NISA』をおさらいしよう!
従来の『NISA』は、導入からこれまでに4つの段階を経て現在に至っています。
まずは導入された2014年1月に遡って、そもそも『NISA』とはどのようなものなのかをおさらいしてみましょう。
【2014年1月】初めて『NISA』が導入された
『NISA』は、上場株式等に対する軽減税率の廃止を背景に、金融商品から得られる配当金や分配金、売却益などについて、最高5年間は非課税となる仕組みの「少額投資非課税制度」として誕生しました。
2014年、この年に株式に対する税率が20%に戻りました。(軽減税率制度の廃止)
そのため、株式や投資の利益が非課税枠となるNISAに人気が集まったのです。
当時の『NISA』で投資の対象となっていたのは主に4つの金融商品です。
- 上場株式
- ETF(上場投資信託)
- REIT(不動産投資信託)
- 株式投資信託
これらに対する投資の新規口座の開設や金融商品の購入は、現時点では2023年12月末までとなっています。
【2016年1月】20歳未満向けの『ジュニアNISA』が誕生
当時の『NISA』では、1年間の投資上限額は100万円でしたが、2016年に120万円まで上限が拡大されました。
同時に『ジュニアNISA』が導入され、20歳未満でも加入できることとなり、加入年齢の制限も拡大となったのです。
若い年齢層も『NISA』を利用できるようになりました。
従来の『NISA』と『ジュニアNISA』は、投資対象や非課税期間は同じでしたが、『ジュニアNISA』には資産の引き出しについて条件が加えられていた特徴がありました。
金融商品から得られた配当金や分配金、売却益などは、口座を開設した人が3月31日時点で18歳となる前年の12月31日までは引き出せない。※災害時などやむを得ない場合は、非課税による払い出しが可能
【2018年1月】非課税期間が延長された『つみたてNISA』が生まれる
『つみたてNISA』という言葉は聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
この『つみたてNISA』が導入されたことにより、2014年1月から始まった『NISA』は『一般NISA』と呼ばれるようになり、2つのNISAが誕生したのです。
同じものじゃなかったんや・・・
では、新しく生まれた『つみたてNISA』には、どのような特徴があるのか、何が違うのか気になるところですよね。
『つみたてNISA』の大きな特徴としては、取り扱う金融商品を投資信託の積立投資のみに限定し、非課税期間が最大20年まで延長となったことです。
- 信託契約期間は無期限、または20年以上
- 為替ヘッジ以外の目的でデリバティブ取引による運用を行わない
- 販売手数料がかからない
- 信託報酬は一定以下
- 運用する会社が金融庁に届け出ている投資信託とETFが対象
- 年間の投資上限額は40万円
なお、『つみたてNISA』による新規口座開設や金融商品の購入は、現時点で2042年12月末までとなっています。
【2020年度】税制改正による延長と廃止
2020年度の税制改正では、それぞれの『NISA』に関して次のような見直しが行われました。
- 一般NISA
-
積立部分と投資部分の2階建ての制度として、非課税期間を5年間延長
- ジュニアNISA
-
利用者が少ないため廃止が決定
- つみたてNISA
-
非課税期間を5年間延長
『ジュニアNISA』が廃止されたことにより、現行残っているNISAは『一般NISA』と『つみたてNISA』の2つとなっています。
非課税枠が大きいことから、『つみたてNISA』の方が知名度が高く、馴染み深いかもしれませんね。
2024年1月からはじまる『新NISA』はどう変わる?
2023年度の税制改正によって、『一般NISA』の2階建てへの移行が理解しづらいということもあり、新しい仕組みを持つNISAへと変わる大幅な改正が実現しました。
改正の背景には、長期的な資産形成を必要とする社会となり、以下のような問題点を指摘されていたことが挙げられます。
- 『一般NISA』の積立部分と投資部分である2階建て制度が理解しづらい
- 20代や30代にとって現行の非課税制度では、現役中に非課税保有期間が終了してしまう
- 『つみたてNISA』は1年間の限度額が40万円なので、十分な資産形成が望めない
そこで2024年1月から始まる『新NISA』では、4つのポイントが改正されることになりました。
- 『つみたて投資枠』と『成長投資枠』となり、2つの投資枠は併用できるようになる
- 恒久化された『新NISA』は、投資期間と非課税保有期間が変わる
- 非課税保有限度額が新たに新設される
- 『成長投資枠』の投資対象商品には除外されるものがある
『一般NISA』と『つみたてNISA』がどう変わるのかについて、1つずつ解説していきます。
『つみたて投資枠』と『成長投資枠』の併用と投資可能額の拡大
2023年度の税制改正では、従来の『NISA』を大きく大改変する制度が誕生しました。
- 『一般NISA』を引き継いだ「成長投資枠」
- 『つみたてNISA』を引き継いだ「つみたて投資枠」
これまで、『一般NISA』と『つみたてNISA』は、同じ年に併用不可とされてきました。
しかし、2024年1月からの『新NISA』では、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の口座を併用して利用することが可能になり、さらなる投資可能額の拡大となりました。
『つみたて投資枠』の口座を新たに解説すると、『成長投資枠』の口座も開設され、2つの投資枠を併用できるようになります。
これに伴い、年間の投資上限額も変更となっているので、確認しておきましょう。
年間の投資上限額 | 一般NISA | つみたてNISA | 一般NISAとつみたてNISAの 併用 |
現行 | 120万円 | 40万円 | 不可 |
↓ | ↓『成長枠』へ | ↓『つみたて枠』へ | ↓ |
新NISA※2024年1月~ | 240万円 | 120万円 | 可能 ≪合計360万円≫ |
『新NISA』では、年間の投資上限額がそれぞれ大きく増額されていることがわかります。
- 一般NISA:『成長投資枠』に名称を変えて上限額が2倍に!
- つみたてNISA:『つみたて投資枠』に名称を変えて上限額が3倍に!
さらに、現行では不可能な併給が『新NISA』では可能となり、最大360万円もの金額を『新NISA』として運用することができるようになりました。
40万か120万円のどっちかやった上限が360万はすごいな。
人気のある『つみたてNISA』は当初の年間上限額が40万円やったから、嬉しい制度改正になったと思うで。
恒久化された『新NISA』は2つの期間が変わる
2024年1月から開始される『新NISA』は、制度が恒久化されたことによって、投資できる期間と非課税保有期間に対する制限が撤廃されることになります。
恒久化ってなに?
一時的なものから、常時化されるみたいな感じやね。
要は、ずっと適用されるよってこと。
投資できる期間は、『一般NISA』と『つみたてNISA』で違いがありましたが、新NISAでは名称が変更されるとともに、どちらも無制限へと変更されます。
【投資できる期間 】 | 一般NISA | つみたてNISA |
現行のNISA | 2023年12月末まで | 2042年12月末まで |
↓ | ↓『成長投資枠』へ | ↓ 『つみたて投資枠』へ |
新NISA※2024年1月~ | 無期限 |
同様に、非課税保有期間も無期限となるので確認しておきましょう。
【 非課税保有期間】 | 一般NISA | つみたてNISA |
現行のNISA | 5年間 | 20年間 |
↓ | ↓『成長投資枠』へ | ↓ 『つみたて投資枠』へ |
新NISA※2024年1月~ | 無期限 |
投資期間は無制限となり、一度開設した新NISAの口座は、一生涯使用することができるようになります。
非課税保有期間も同様に無制限となったことにより、購入した金融商品の配当や分配金、売上益などは、いつまでも非課税で受け取ることが可能です。
非課税保有期間の無期限化に伴い、現行のつみたてNISAと同様、定期的に利用者の住所等を確認し、制度の適正な運用を担保
金融庁:新しいNISA「新しいNISAのポイント」より抜粋
期限にとらわれず、ずっと非課税で投資ができるようになったんですよ。
新設された『非課税保有限度額』
『一般NISA』と『つみたてNISA』には、最大非課税投資額が設けられていましたが、撤廃されて新たに総枠による非課税保有限度額が設けられます。
【投資限度の制度変更 】 | 一般NISA | つみたてNISA |
現行のNISA | 最大非課税投資額:600万円 | 最大非課税投資額:800万円 |
↓ | ↓『成長投資枠』へ | ↓ 『つみたて投資枠』へ |
新NISA※2024年1月~ | 非課税保有限度額(総枠):1,800万円 うち、成長投資枠は1,200万円まで |
『新NISA』では、『成長投資枠』と『つみたて投資枠』の合計で1,800万円まで投資額を保有することができますが、成長投資枠は1,200万円までしか利用できません。なお、つみたて投資枠のみで1,800万円利用することは可能です。
成長投資枠で1,200万円投資したら、残りの600万円はつみたて投資枠で投資せなあかんねんな。
あれ?一生で1,800万円って結局少なくない?
年間の限度額(最高360万円)を毎年投資を追加し続けると、単純計算で5年で非課税保有限度額の1,800万円に至ってしまいますが、再投資することができるので心配はありません。
仮に保有限度額いっぱいまで利用した場合、NISAで購入した金融商品を売却することにより、翌年には売却した金額分が限度額の枠として復活するため、年間の投資限度額を超えない範囲で新たに再投資することが可能です。
なお、売却によって再利用できる非課税保有限度額は、簿価残高方式が適用されるため、売却によって得た利益は加味されません。
株価や投資信託などを購入したときの買値が適用されることにより、売却利益などは加味されない。
(例)200万円で購入した投資信託を300万円で売却した場合
100万円の売却利益が出るが、「売却する金融資産=買い付け残高」となるため、非課税保有限度額は200万円(買い付け残高と同額)の空きが出ることになる。
売却と買い付けによって、非課税保有限度額を上手に活用することで、より大きな資産運用ができるようになることでしょう。
利用者それぞれの非課税保有限度額については、金融機関から一定のクラウドを利用して提供された情報を国税庁において管理
金融庁:新しいNISA「新しいNISAのポイント」より抜粋
現行のNISAよりも、一生で利用できる投資額の限度額が大きく増えているんです。
変わる?変わらない?投資対象商品
現行の『つみたてNISA』は、『新NISA』になると「つみたて投資枠」へと名称が変わりますが、対象となる金融商品は変わらず、長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託です。
一方、「成長投資枠」へと名称変更する『一般NISA』は、一部変更となっているので確認しておきましょう。
対象となる金融商品 | 投資対象商品 |
現行の一般NISA | 上場株式、投資信託など |
新NISA(成長枠投資) | 上場株式、投資信託など ※整理・監理銘柄、投資期間20年未満・高バレッジ型・毎月分配型の投資信託は除く |
『新NISA』の「成長投資枠」では、長期にわたって成長できる投資手法が考えられるので、「つみたて投資枠」と同じ銘柄で投資することも投資方法の1つです。
- eMAXIS Sim 全世界株式(オール・カントリー)
- eMAXIS Sim 先進国株式インデックス
- eMAXIS Sim 米国株式(S&P500)など
また、「成長投資枠」ならではの投資信託や個別株・ETFも選択肢に入れても良いかもしれませんね。
- <購入・換金手数料なし>ニッセイNASDAQ100インデックスファンド
- eMAXIS Sim 先進国債券インデックス
- SBI・V・米国増配株式インデックス・ファンド
つみたてNISAの対象商品を知りたいならコチラ≫≫≫金融庁「つみたてNISAの対象商品」
新NISA成長投資枠の対象商品を知りたいならコチラ≫≫≫一般社団法人 投資信託協会「NISA成長投資枠の対象商品」
投資商品の特徴などについては、別記事で改めて紹介したいと思います。
いつになるのニャ??
なるべく早く・・・がんばります・・・
金融機関による「成長投資枠」を使った回転売買への勧誘行為に対し、金融庁が監督指針を改正し、法令に基づき監督及びモニタリングを実施
金融庁:新しいNISA「新しいNISAのポイント」より抜粋
新NISAになっても変わらない損益通算の不可
NISAの口座内で損失が出た場合は、損失がないものとしてみなされる制度は、新NISAになっても変わりません。
つまり、NISAによる投資で損失が出ても、NISAの口座内で得た利益やNISAの口座以外で得た利益などと、損益通算はできないのです。
NISAの大きな特徴は、利益が出ても非課税であることです。そのため、損失が出ても通算させる課税対象となる利益が存在しないため、損益通算はできない仕組みとなっています。
めっちゃええやん!!
なお、金融商品を売却して空けた非課税枠の再利用は同年中には使用できず、逆に、年末の時点で使い残した非課税枠を翌年に持ち越すこともできません。
これらの仕組みは、現行のNISAと変わりませんので、覚えておいてくださいね。
すでにNISAを利用している人はどうなるの?
現行の『一般NISA』や『つみたてNISA』をすでに利用している場合、NISAの口座にある金融商品を『新NISA』へオーバーロール(移管)することはできません。
非課税期間が終了するそれぞれの期間まで、非課税のまま保有し続けることはできますので、継続か売却かを検討する必要があります。
金融商品の移管はできませんが、新NISAの口座開設は、新制度の開始後、自動的に設定される予定です。
『ジュニアNISA』で金融商品を保有している場合は、2023年12月末に制度が廃止されても一定の手続きを行うことで、利用者が18歳になるまでは非課税のまま保有することが可能でした。
しかし、今回の制度改正によって一定の手続きが不要となり、5年の非課税期間終了後は継続管理勘定へ自動的に移管され、利用者が18歳になるまでは非課税で保有することができます。
18歳の期限とは、1月1日時点で18歳である年の前年12月31日までとなります。
『貯蓄から投資へ』どれくらいの人がNISAを利用しているの?
若年層を中心に人気を集めた『つみたてNISA』は、投資初心者でも比較的利用しやすい資産運用の制度です。
分散投資に適した投資し信託として厳選されており、投資方式が安心の積立方式に限定されていることなどが理由として考えられます。
では、どれくらいの人がNISAを利用しているのか、2022年12月末時点の口座数で確認してみましょう。
2022年12月末時点のNISA | 口座の数 |
---|---|
一般NISA | 約1,075万口座 |
つみたてNISA | 約725万口座 |
ジュニアNISA | 約101万口座 |
2023年9月1日時点で、金融庁に届け出されている『つみたてNISA』対象商品は全部で248本あります。
- 指定インデックス投資信託:209本
- 指定インデックス投資信託以外の投資信託(アクティブ運用投資信託など):31本
- 上場株式投資信託(ETF):8本
金融商品について詳しく知りたい方は、金融庁や投資信託協会で公開されているので、ぜひ確認してみてください。
【金融庁】「つみたてNISA対象商品届出一覧(対象資産別)」https://www.fsa.go.jp/policy/nisa/20170614-2/26.pdf
【投資信託協会】「NISA成長投資枠の対象商品」https://www.toushin.or.jp/static/NISA_growth_productsList/
これだけ多くの口座があるということは、それだけNISAを利用している人が多いことがわかります。
これまでは投資を利用したことがなかった人でも、間もなく始まる『新NISA』なら、投資初心者も安心できる運用方法だと言えるでしょう。
俺、やってみよかな。
困ったときは特設サイトもあるよ。
2024年1月から始まる『新NISA』のまとめ
非課税枠が大きく広がり、資産運用に役立つ『新NISA』に興味を持っている人は少なくありません。
これまでNISAを利用したことがない人も、少しでも利率の良い投資ができるならと検討している人も多いでしょう。
また、すでにNISAを利用している人は、より拡大された非課税枠を利用してさらなる資産運用を考えている人もいらっしゃるのではないでしょうか。
低金利が続く日本では、少しでも老後に向けて投資を活用した資産運用が必要とされていることは事実ですが、資産が投資に偏ってしまうと常に資産にはリスクを伴うことになってしまいます。
資産運用はリスクを分散しながら行うべきものですので、『新NISA』の仕組みや特徴を理解した上で上手に活用してくださいね。
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