新型コロナウィルス対策で国民健康保険に傷病手当金⁉申請できる人や制度について解説
全世界に猛威を振るう新型コロナウイルス。国からの補助にも頼れず、国民みなさんが苦しい思いをして日々を過ごしています。みなさんの周りでコロナウィルスに感染したことが原因で収入が減ったという人はいらっしゃらないでしょうか。
コロナウイルスに感染しただけでなく、濃厚接触者の定義にあたると自宅待機、家族に陽性者が出ると家族全員が自宅待機にもなりかねず、結果的に仕事を休むことが必要となり収入が激減したという世帯は少なくありません。
フリーランスや自営業者の方々は「こんなときに会社だったら保障されたはずなのに…」と考えてしまう方もやはりいらっしゃるようで私も数件相談を受けました。
そんな中で、意外と知られていない国民健康保険による傷病手当金の説明機会が多かったので、この機会に国民健康保険の傷病手当金について少し説明していきたいと思います。
国民健康保険加入者に朗報!コロナで傷病手当金を申請できる
そもそも傷病手当金の制度は会社員などが加入している社会保険において存在しており、怪我や病気によって仕事ができない状態になったときに加入している健康保険から収入の60%程度の保障を受けることができる制度です。
俺も昔、怪我したときに傷病手当金の申請して半年くらい貰って休んだことあるで。
働いてる人とかその家族とかの生活保障のために、こういう社会保障があるねん。
つまり、傷病手当金とは会社員などのように働いている場所で収入の証明をできる状態であることを前提とした制度なのです。では社会保険に加入できないフリーランスや個人事業主、アルバイトをされている方々が加入する国民健康保険に、傷病手当金という制度は存在しているのでしょうか。
特例として国民健康保険での傷病手当金
はっきり言うと国民健康保険には傷病手当金という制度は存在しません。ではなぜ私が国民健康保険に加入している方からの問い合わせで傷病手当の紹介をしているのかおわかりでしょうか。
実は世界中で猛威を振るっている新型コロナウィルスによって収入が減り、休職などを余儀なくされ生活費の工面に苦慮しているのは社会保険に加入している会社員だけではありません。
さらに会社員には有給休暇を取得したり加入する健康保険から傷病手当金によって収入保障がありますが、フリーランスや個人事業主、アルバイトの方には収入に対する保障は自助努力以外どこにもありません。
しかし、このコロナ過に限り新型コロナウィルス対応として、国民健康保険でも非正規雇用の労働者に対して社会保険と同様に傷病手当金の制度を取り入れるという動きから、国民健康保険に加入している方も手当金を申請して受け取ることができるようになりました。
ほんならアルバイトとか個人事業主も傷病手当が貰えるようになってるん?
そこが問題やねん。同じ国民保険に入ってる人でも傷病手当金の対象外の人がおるねん。
国民健康保険による傷病手当金を申請できる人は誰?
遡ること令和2年3月10日、厚生労働省保険局より国民健康保険および後期高齢者医療を取りまとめている各自治体へ国民健康保険による傷病手当金の支給について検討してくださいという文言の事務連絡が発行されました。
事務連絡の内容は新型コロナウィルス対策によるもので期間限定の国民健康保険による傷病手当金制度の採用についての内容となっていました。
- 国民健康保険による傷病手当金制度の採用を検討の依頼
- 傷病手当金の支給に関した費用は全額国で財政支援を行う予定である
- 対象は新型コロナウィルスに感染もしくは症状により感染が疑われる者
- 仕事に行けなくなた日から4日目を起点日として仕事に行けない期間
- 直近の3カ月間の収入合計を就労日程で割った3分の2×日数を支給
- 適用は令和2年1月1日から9月30日までで仕事に行くことができない日数分
厚生労働省から自治体への事務連絡内容はこちらからご覧いただけます。
このような流れから、新型コロナウィルス対策として臨時的な国民健康保険での傷病手当金が誕生することになりました。
だからと言って、国民健康保険に加入しているからと言って誰でも傷病手当金を申請できるわけではありません。もちろん収入を補うものとして傷病手当金は存在しているので収入がない方についてはコロナウィルスを患ったとしても傷病手当金を申請することはできません。
さらに注意しなければならない条件が給与の支払いを受けている者であることが前提となっていることです。これがどういうことなのか、おわかりいただけるでしょうか。
給与の支払いを受けてるって…それって雇われて給料もらってる人ってことやろ?なんか問題ある?
じゃあ、フリーランスや自営業者とかで給料じゃなくて自分自身で収入を得てる人は?ってなれへん?
それは雇われてはないやろ。あ…マジか…
どうやら我が家の旦那くんも気づいたようです。
そうなのです。給与の支払いを受けているということは、どこかに雇われているということになるので残念ながらフリーランスや自営業者の方はもしも新型コロナウィルスに感染してしまったとしても、国民健康保険による傷病手当金の申請はできないということになります。
新型コロナウィルス対策による国民健康保険の傷病手当金を申請できる条件
- 国民健康保険に加入し、事業主に雇用されて給与の支払いを受けている
- 新型コロナウィルスに感染または症状などから感染疑いで療養し就労できなかった
- コロナウィルスによる療養で給与の支払いが未支給、または一部減額支給されている
ここでよくある質問が2つありますので紹介させていただきます。
新型コロナウィルス感染者の濃厚接触者になって休んだ場合や会社から症状があるから出勤停止と言われた場合は傷病手当金を申請できるのか?
一番多い質問がこのケースでした。残念ながらこの場合、傷病手当金の申請対象外となることを知っておいてください。あくまで申請対象となるのは、新型コロナウィルスに感染もしくは症状などから新型コロナウィルスへの感染を疑われて就労できなくなった場合のみです。
余談ですが、濃厚接触者となった旨を勤務先へ報告すると、恐らく会社から出勤停止と言われることが多かいと思います。この出勤停止についてですが、勤務先からの指示により出勤停止となった場合には業務命令となり基本的には給与の支払いが発生することになります。
フリーランスや個人事業主が申請する場合は、収入の証明はどのように申請すれば良いのか?
こちらも非常に残念ですが、どこの市町村を確認しても給与の支払いを受けていることが前提の国民健康保険による傷病手当金となっています。つまり、フリーランスや個人事業主の場合は申請対象外となります。ここがフリーランスや個人事業主をぬか喜びさせてしまう原因でもあり、私は何度も問い合わせをいただきました。
でも個人事業主だってコロナなったら働かれへんで。そんなん不公平じゃない?
そやな。でもフリーランスとか個人事業主は他のコロナ対策で支援対策があるねん。
そうです。フリーランスや個人事業主の方々も諦めてはいけません。以前はフリーランスも含めた個人事業主も持続化給付金、最近では事業復活支援金として新型コロナウィルス対策による経済支援が行われています。
国民健康保険による傷病手当金はどんな保障内容?
いくら臨時的な国民健康保険の傷病手当金とはいえ、保障内容が手薄になっているわけではなく申請して受給することができれば、一般の健康保険の傷病手当金と同等の受給が可能です。
傷病手当金ってもらったけど、あんまり金額とか気にしてなかったからよくわからんねんな。
少しは気にするようにした方がええと思うで。
では本来は存在しないはずの国民健康保険の傷病手当金について、期間限定の臨時的な保障内容を確認していきたいと思います。もし該当したことがあるのに申請していなかったという人でも、遡って申請することが可能なので諦めずに内容を確認し、定められている期間中に傷病手当金の申請をするようにしてみてくださいね。
仕事を休んだその日から支給対象となる?
社会保険の健康保険に加入している場合は、支給対象となるまで3日間の受給できない期間があることをご存じでしょうか。残念ながら仕事を休んだその当日から継続して3日間の仕事を休んでいる場合、4日目から傷病手当金の支給起点日となります。
4日以上休んだら1日目から出るんじゃないん?
欠勤が3日間あることが必要やねん。しかもその3日間は全く保障なしで、4日目から1日いくらって感じで保障されるねん。
気をつけておきたいのは、この受給できない期間となる3日間を有給で賄わないことが大切です。有給とは働ける環境であるにもかかわらず個人の予定で休暇を取るということになるため、病気などで働けなくなったという事実を欠勤という形で残さなければならないのです。
こういった社会保険の健康保険と同様、国民健康保険による臨時的な傷病手当金についても、支給対象日となるまでの3日間は対象期間となりません。さらに新型コロナウィルス対策による傷病手当金となるため、新型コロナウィルスによる療養による3日間の欠勤扱いが必要となります。
そういうことかー…でも1ヶ月休んだら1ヶ月分まるまる貰えるんやろ?
それも社会保険と一緒で、もともと休みになってる日に対しては支給してくれへんで。
- 新型コロナウィルスに感染または症状による感染疑いによって療養が必要となり、3日間継続して就労できなかった日の翌日4日目から支給対象となる。
- 就労を予定していた日のみが支給対象となり、休暇予定日は支給対象外となる。
国民健康保険による傷病手当金も、雇用先に収入の証明をしてもらう必要があります。その際に予定就労日の確認が必要となります。もし週休2日の勤務予定だった場合は1週間あたり5日分の支給ということになります。
傷病手当金の金額はどれくらい?収入は減ってしまうの?
残念ながら毎月もらっている給与の全額を傷病手当金で受け取ることはできません。これは国民健康保険だからという理由ではなく、会社員が加入する社会保険でも同じです。
では、なぜ収入となる給与と同じ金額を保障してもらえないのでしょうか。保障というからには全額保障をして欲しいと我が家の旦那くんなら言いそうですが…
なんで減らすねんなぁ。それだけ保険料払ってるのに・・・
言うと思ってたわ。そもそも保険は保険でも保障の保険じゃないんねんから。
そうなんです。保険の趣旨が全く違うからこそ傷病手当金では収入の全額保障はしていないのです。詳しく説明しだすと話が長くなって我が家の旦那くんには子守歌となってしまうので簡潔に説明します。
傷病手当金とは、怪我や病気で働けない状態に陥ってしまったときに本人や扶養家族が生活のための最低限の収入を確保できるように存在するものなのです。
治療費などの出費が多くなることにより不安があるのであれば、医療保険や生命保険をはじめとして最近では就業不能となった場合に保険金を受け取ることができる保険が販売されており、こういったもので収入の差額を補う方法を取ることになります。
保険やけど、生命保険と社会保険じゃ意味が違うってことやねんな。
せやな。そもそもの存在理由が生命保険とは違うから収入の全額保障には結びつかへんねん
では、社会保険と同様の保障となる国民健康保険による傷病手当金の計算をお伝えします。
直近3カ月間の給与収入から1日あたりの支給額を計算し、その3分の2となる約6割程度が1日あたりの傷病手当金として支給されることになります。
もちろん1カ月分の日数を受給できるわけではなく、就労を予定していた日数分のみが支給されることになります。つまり、1カ月で20日間の出勤予定だった場合には20日分の傷病手当金を受給することとなるのです。
ちなみに、どれだけ高給であっても1日あたりの支給上限額が定められているので、残念ながら上限額以上を支給されることはありません。
傷病手当金が減るのはわかったけど…なんか出勤予定やった日だけって悲しいな。
でも働いてても休みはあるやん。だから、それはしゃーないで。
減額して給与が支払われた場合って傷病手当金は貰えない?
企業の中には、できるだけ従業員を守ろうとする尊敬すべき経営者もいらっしゃることでしょう。
いくら休んでいると言ってもコロナだし我が社は満額給料を払おう。
僕の会社は従業員の家族のことも考えて減額分はできるだけ少なくしよう・・・
こういった人情味あふれる経営者のもとで働いている幸運な方は、休んだ分の給与減額が突然家計を圧迫するほどの給与減額は発生しないかもしれません。
しかし、現実問題として新型コロナウィルスに感染した場合や感染が疑われた場合には医療費もかさみ給与が減額されると直ちに家計を脅かすという家庭は今のご時世少なくないと思います。そこで傷病手当金の制度では、給与が支払われなかった場合だけでなく減額されて支給された場合にも受給することが可能となっています。
あれ?欠勤の状況が必要なんじゃなかったっけ?
世の中には1カ月のうち14日休んでも、残りの出勤日数で月収から少ししか減額せーへんっていう優しい会社もあるやろ?
マジか…俺の会社たぶんすぐに給料引かれるで。
いや、それが当たり前やけどな…
もし給与が減額されて支給された場合には、まず申請すれば受け取ることができる傷病手当金を計算してみましょう。その上で、傷病手当金よりも給与として支給された金額が少ない場合には、その差額が傷病手当金として支給されます。
逆に言えば、給与が減額されていても計算した傷病手当金の金額より支給された給与の方が多い場合には支給されないということになります。
国民健康保険の傷病手当ってどうやって申請するの?
普段から我が家の旦那くんのように書類が苦手だったり、手続きが面倒だと感じる方は少なくないかもしれません。
しかし国民健康保険での傷病手当金の申請は、社会保険の傷病手当金の申請と同じ要領となっているので、敬遠するほど難しい申請方法ではありません。
傷病手当金を申請しようとする場合、申請者本人が記入するのは申請書類4種類のうち2種類です。あとは勤務先と医療機関となりますので、それぞれを簡単に説明しておきます。
国民健康保険の傷病手当金の申請書類は4つだけ!自治体に確認しよう
国民健康保険は居住する自治体で保険料を決定したり、国民健康保険における各種の手続きが行われているため、国民健康保険における傷病手当金の受給申請も居住する自治体に申請を行うことになります。
申請も大変そうやな…どうせ書類がいっぱいなんやろ?
ほんまに書類とか嫌いやなぁ。でも、そこまで難しくないから覚えておいて損はないで。
コロナ過の現在、どこの自治体でも公式ホームページで国民健康保険における傷病手当金の案内が行われています。万が一、自分の自治体はホームぺージに書いていなかったという場合には、直接自治体へ電話して国民健康保険の担当窓口に確認してみてください。
国民健康保険の傷病手当金を申請する必要書類は4種類です。
- 誓約兼同意書および口座名義の確認
- 症状などを含む傷病手当申請書
- 事業主記入書類
- 医療機関記入書類
誓約兼同意書および口座名義の確認、症状などを含む傷病手当申請書の2種類は、申請者本人が記入するものとなるので、すべて記入するようにしましょう。そこまで難しいものではなく見もつけてくれているので、記入しやすいと思います。
事業主記入書類は、申請者の給与やどれくらい仕事を休んでいたかなどを証明する書類となるので、勤務先へ記入の依頼をしましょう。この書類をもとに傷病手当金の金額や受給日数が確定します。
医療機関記入書類については、就業することができなかった理由などについて医師の所見が必要となりますので医療機関で記入してもらいます。
今回の国民健康保険における傷病手当金の制度は、臨時的かつ新型コロナウィルスが関係していなければ受給することはできません。
記入してもらった書類には目を通し、新型コロナウィルス感染もしくは症状から新型コロナウィルス疑いであることが記載されているか確認しておいてください。
ずっと前に新型コロナウィルスに感染して休んだけれどもう遅い?
令和2年から新型コロナウィルスが爆発的に流行し、いまだに収束の出口が見えない状況となっています。コロナ過が長く続き国民健康保険による傷病手当金を知らないまま現在に至る人は少なくないと思います。
こんなに有名なってんのに知らへん人っておるん?
いやゴメン…知らなかったですよね?
・・・。え?まさかー知らんはずないやん。(棒読み)
大丈夫。実際に労務士さんでさえ国民健康保険の傷病手当金を知らんかったから…
驚いたけどな。それが2021年の年末やった。まだ3カ月前やな。
我が家の旦那様が国民健康保険の傷病手当金の制度を知らなかったように、コロナウィルスに感染して仕事を休んだ場合でも制度を知らずに申請することができなかったという人もいらっしゃいました。
「もう今更やし…」という残念そうな言葉が出ていましたが、遡って申請が可能であることを伝えるとすぐに申請すると元気におっしゃられていました。
新型コロナウィルスに感染、あるいは症状によりコロナウィルス感染疑いで療養を余儀なくされた場合、療養により仕事を休んだ日から5日目を起点に2年間まで遡って申請することが可能となっています。
傷病手当金の4日目と遡る場合の5日目を混同しないように!
もし今から1年前に新型コロナウィルス感染により自宅療養し給与の支払いを受けていない場合、これから国民健康保険の傷病手当金を申請することが可能です。
傷病手当金は制度により給与の約6割、さらに勤務日数分と限られた保障となるので大きな金額は望めないかもしれませんが、療養日数によってはそれなりの支給額となりコロナ過で大変な家計を助けてくれると思います。
【まとめ】臨時的な国保の傷病手当は遡って申請できる
基本的に国民健康保険には傷病手当金という制度は存在しません。しかし新型コロナウィルス対策として現在では国民健康保険に加入している方でも傷病手当金を申請して受給することができます。
2022年7月30日現在では期間が延期され、2022年9月30日まで申請することができますが、下記の内容には注意しておいてください。
- 新型コロナウィルスに感染もしくは症状により感染疑いがある場合のみ申請が可能
- 国民健康保険による傷病手当金の申請ができるのは雇用され給与の支払いを受けている人のみ
- フリーランスや個人事業主は傷病手当金の申請は対象外
- 継続して休んだ日の4日目から受給が可能となる
- 休んだ期間の給与が支払われていない又は減額支給されていることが前提
国民健康保険に加入していて傷病手当金の申請を行おうとする場合は、必ず居住している自治体への確認が必要です。また、過去2年間に遡って申請することが可能となっているので、申請をしていないと思われた方はぜひ一度自治体へ確認して今からでも申請してみてください。
コロナ過が続き全世界が大変な状況となっていますが、少しでも早く収束することを願ってやみません。どうか皆さまもお身体にはご自愛くださいませ。
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