医療費控除は自分の医療費だけ?医療費は10万円以上どうしても必要なの?
確定申告が近づくと耳にする機会が多くなる医療費控除についての全容を解説していきます。
医療費控除と聞くと、医療費領収書の保管が面倒だったり、そもそも年間10万円も医療費を使わないし・・・そう思っている方も多いようです。
今は核家族化により大人数での同居が減っている時代ですが、それでも同居する夫婦や子どもがいたりすしますよね。家族の誰かが持病による定期的な診察や投薬がある場合には、医療費控除を利用できるだけの控除額が出てくる可能性は高くなります。
今回は、確定申告における医療費控除のお得に使える上手な使い方について解説していきたいと思います。
医療費控除って医療を受けた本人の分しか使えない?
所得税を確定する確定申告は自分自身の所得を申告することになるので、医療費も自分自身が支払ったものが対象と考えている方はいらっしゃいませんか。
医療費控除を利用するにあたり、医療費を支払った領収証は必ずしも確定申告を行う本人が支払ったものでなくてはならないということはありません。
よく本人だけの分やと間違えられてるねん。
医療費控除を利用する場合には、生計を一にする配偶者や子ども、親族のために1年間で支払った医療費を合算することができます。
また家族の暮らす環境によっては、別居している家族であっても医療費の合算が可能なケースもあります。
同居じゃなくても大丈夫なん?生計は一緒じゃないとあかんのに?
そう思うやろ?ほんなら簡単に解説していくわな。
医療費が合算できる家族は誰?ポイントは生計の立て方
医療費控除で医療費を合算できるのは、生計が一である家族(親族)の医療費ということが前提となります。
ここでよく聞く生計を一にするという意味ですが、その意味を詳しくご存じでしょうか。
要は一緒に暮らしてるってことなんちゃうん?
その暮らし方がポイントになるねん。よく聞く言葉やねんけど、詳しく説明しろって言われたらよくわからんもんやねんな。
さて、次の場合だと生計を一にしていると言えるのは、どのパターンだと思われますか?
- 従妹と同居している場合
- 家族が別々に住んでいる場合
- 2世帯で同居している場合
- ペットの猫と同居している場合
猫はさすがにあかんやろ(笑)
父さん、俺も家族だにゃ!
簡単に言えば、生活するお財布が同じかどうかというとろこがポイントとなります。
もちろん猫はアウトです(笑)
つまり、同居していて生活費を共有している状態であれば、それは生計を一にしているとみなされます。
二世帯同居などで生活費を別々にして暮らしている場合には、生計を一にしているとはみなされないので注意が必要です。同居ではなく、生活費のお財布がどうなっているかということが重要となるのです。
必ずしも同居というわけではない!別居でも生計が同じ家族は?
家族で生きていくためには働くことが必要です。しかしこのご時世、そう簡単に理想の働き方や収入が得られるとは限りません。
家族の大黒柱である世帯主が単身赴任で働くことになったり、家族のもとを離れて独立した子どもの生活を助ける必要があったりと、家族が離れずに働ける保障はどこにもありません。
別居してても生計を一にしている家族もおるやんな。
単身赴任している場合や別居の家族がいる場合、2つの生活状況がポイントになります。
- 離れて暮らす家族に生活費や学費、療養費などを常に助けて送金している
- 日常生活の同居はないが、休暇時には家族のもとに戻って過ごしている
ほんなら、別居の息子に生活費だけ渡してるだけでも生計を一にするっていうのになるってことやな。
手渡しやと援助してる証拠がなくなるから、あたしみたいに振込で証拠を残してたらなお良しって感じやな。
ここではよくある2つの例を出して、生計が一となるのかどうかを紹介したいと思います。
進学のために遠方に子どもが転居したけれど、毎月生活を援助しているケース
生活費を常に子どもに仕送りし生活の援助をしているケースでは、たとえ一緒に暮らしていなくても生計を一にしている状態といえます。もしこれが生活費ではなく学費を送金しているケースであっても同様の扱いとなります。
進学じゃなくて別居してバイトしてる息子はどうなるん?
我が家のように子どもが家を出て働きに出たけれど、十分な収入が得れず家族の援助がなければ生活を維持できないといったケースなら、たとえ別居をしていても生活費の援助をしているなら生計を一にしているということになります。
夫は単身赴任で大型連休しか帰省できず、妻は自分の給与で子どもと生活しているケース
時代の流れもあり、最近では女性でも仕事で活躍する場が多くなりました。育児をこなしながら自分と子どもの生活費を妻自身の給与から捻出できる場合、単身赴任である夫の稼ぎに頼る必要のないケースもあります。
では、妻が自分の稼ぎだけで生活をしている場合、単身赴任をしている夫との生計は別と考えられてしまうのでしょうか。
生活費が別々ってことやろ?そら無理やろ。それって生活の財布が別々やん。
生活費のお財布は一緒ではありませんが、夫の単身赴任は仕事をする都合でやむを得ない別居となります。
単身赴任をしている夫は、大型連休などを利用して帰省し本来の居住地である自宅で、妻や子どもと過ごすこともあることから生活を一にしていると言えるのです。
医療費控除は10万円ないと使えないって本当?
医療費控除は10万円以上の医療費を支払っていなければ控除が利用できないということは、昔から有名な話なので知っている人も多いはずです。
それは俺でも知ってるで。でも10万円って家族のん足しても超えへんよな。
もし10万円分となる医療費の領収証があったとしても、それだけで医療費控除が利用できるわけではなく、10万円を超えた部分について医療費控除が使えるということを覚えておいてください。
しかし所得金額によっては、医療費が10万円に満たなくても医療費控除を利用できる場合があるので、ご自身の所得金額をよく確認しておくことが必要です。
なぜ医療費控除って10万円も必要なの?
10万円以上なければ医療費控除が利用できないという理由から、医療費控除を利用する方が少ないのですが、10万円以下でも医療費控除を利用できる場合もあります。
それなのに、なぜ医療費控除には10万以上と言われるその理由をご存じでしょうか。
よくある医療費控除を利用できない理由
- 10万円以上の医療費を使っていないから医療費控除は使えない
- 10万円を少ししか超えていないから医療費控除を使っても意味がないと思う
- 領収証がないから10万円の医療費があるか不明で医療費控除ができない
俺も面倒くさいから使ったことないけど、10万円以上のの医療費がないと意味ないんやろ?
所得金額によっては10万円以下でも医療費控除は使える場合もあるねんで。
じゃあ10万円ってなんなん?
医療費控除を利用するためには、ある計算式に基づいて医療費控除で利用できる金額が決まります。
その計算式のなかで差し引かれる金額が10万円であるため、医療費が10万円以上なければ医療費控除を利用することができないのです。
ただし、所得金額が200万円以下の場合には上記の式は利用せず、所得の5%までの医療費であれば医療費控除として利用できるということを覚えておいてください。
10万円の医療費がなくても医療費控除を利用できる場合がある
必ずしも10万円以上の医療費というわけではなく、所得によっては医療費が10万円以下でも医療費控除が利用できます。
200万円かぁ…俺はそれ以上の年収があるしな…やっぱり10万円以上の医療費が必要やん。
ここでも年収と所得の違いがポイントになるから、よく確認しておいてな。
年収と所得の違いかぁ・・・
うん。詳しくはこの記事で確認してみてな
所得200万円って、ざっくり年収でどれくらいなん?
年収でいくと297万円で給与所得199万9,000円やから、年収297万円がボーダーラインかなぁ。
保険金などによって医療費が補填された場合はどうなるの?
生命保険や医療保険に加入している人は多いと思いますが、もし怪我や病気による入院をした場合は生命保険や医療保険から保険金や給付金が支払われます。
このような場合は、保険金や給付金は医療費に充てることになるため、医療費控除を利用しようとする際には実際に支払った医療費から保険金や給付金を差し引く必要があるのです。
え―・・・保険で出たお金があったら医療費から引かなあかんの?
そうやで。控除を使うときは気をつけないとあかんねん。
加入している医療保険の支払いがあった場合、どのように医療費控除をすれば良いのか例を出して考えてみましょう。
以下のような場合、どちらが正しい医療費控除の計算となるでしょうか。
医療費控除の対象外?それとも対象?どちらでしょうか。
- 入院費用30万円+歯医者の治療費15万円-補填金40万円=5万円【医療費控除の対象外】
- 入院費用30万円-補填金30万円+歯医者の治療費15万円=15万円【医療費控除の対象】
払った医療費から保険金は引くんやから…①があってるんちゃうん?だから、医療費控除はこの人は使われへんってことや!
歯医者の治療費15万円は、入院費用とは別の医療費として考えることになります。入院費用30万円に対しての補てんとなるので、入院に対して支払った30万円を上限として保険金を補てん額を差し引くことになります。
入院費の補填金額を計算したあとに補填されていない医療費と合算することで、保険金による補填額を控除した医療費の金額が判明することになります。
つまり、先ほどのAさんの例では、②の医療費控除の対象になるが正解になります。
- 入院費30万円に対する保険金が40万円。しかし補填金とされるのは実際に支払った30万円までとなるので、補填金は30万円となる。
- 入院費30万円-補填金30万円+歯医者の医療費15万円=15万円
- Aさんは所得が200万円以上であるので10万円が差し引かれる。
- 15万円-10万円=5万円
- Aさんの利用できる医療費控除は5万円となる。
なるほどなぁ~
間違えて理解してると、医療費控除は使われへんって思ってしまうから気をつけないとあかんねん。
このように医療費控除を計算しても、やはり医療費の金額が足りないという方は、本当に不足していますか?
医療費控除の対象となるのは病院に支払った医療費だけではないので、該当するものがないか今一度確認してみてください。
医療費控除の対象となる医療費って何がある?
医療費と言われるくらいなので、病院に支払った医療費しか対象にならないと思っていらっしゃるケースが多いのですが、必ずしも病院代だけが医療費控除の対象というわけではありません。
最近では、ドラックストアでも多くの医療品が販売されており、よほど体調が悪くなければ病院へ行かずに自力で治すという方も多いのではないでしょうか。
俺は気合で治す。
病院へ行き処方箋で薬を貰う人もいれば、ほどんどの症状を薬局の薬で治してしまう人もおり、人によっては医療費控除ではなくセルフメディケーション税制を利用した方が良いケースもあるので後程ご紹介します。
医療費控除として認められるものってなにがある?
まずは医療費控除として認められる医療費にはついて、改めて覚えておいて欲しいと思います。
- 医師や施術士、専門家などによる診療治療や介助費用
- 看護師や保健士などによる療養上の介助費用
- 治療や療養に必要となる医薬品の購入費用
- 病院へ搬送されるときに発生した労働対価費用
- 通院費や医師などの送迎費用
- 医療用器具の購入やレンタル費用
- 松葉づえや義足、義手、義歯などの購入費用
- 介護保険制度により提供されるサービス利用をした費用
医療費控除の対象となる医療費について知りたい方はこちら≫≫国税庁「医療費控除の対象となる医療費」
また、治療には関係のない妊娠や出産に関する費用も医療費控除に含むことができますが、出産をした際には加入している健康保険からの一時金などが支給されるため出産費用から差し引く必要があります。
出産により健康保険から出産育児一時金などを受け取った場合には、控除を受ける際に出産で支払った費用から差し引いて医療費控除を利用します。
ただし、産前産後の休暇による出産手当金は、医療費を補填するものではないので医療費から差し引く必要はありません。
医療費控除には介護サービスなどの費用を含むことができますが、在宅サービスなどでは医療費控除の対象外となるものがあるので必ずしも全額が医療費控除として利用できるとは限りません。
在宅サービスを営む事業者から発行される領収証には、医療費控除に利用できる金額が記載されていることが多いので確認するようにしてください。
治療だけってわけじゃないねんな。
生きていく上で医療だけじゃなくて出産や介護も欠かされへんもんやからなぁ。
医療費控除として使うときに注意が必要なもの
医療費控除として認められるものの中には、状況や内容により医療費控除としての医療費から除外されてしまう場合もありますので注意が必要です。
医療費控除には利用できるけれど使い方や目的に注意が必要となる代表的なものを紹介しますので、間違って医療費控除に含まないように気をつけてくださいね。
- 自家用車での通院交通費
- 健康診断や人間ドッグ
- 薬局で購入した医療品
通院交通費を利用した場合の注意点
通院のための交通費が控除の対象となるのは、公共交通機関やタクシーを利用した場合のみです。自家用自動車のガソリン代や駐車場代は除外されます。
病院なんか遠かったら車で行くで。それに電車とかバスって領収証出ぇへんけど、それっていいん?
公共交通機関を使った場合は、医療費控除を使うときに年間の公共交通機関を使った合計額を書けば大丈夫やねんで。
また、子どもの通院に付き添うための保護者の交通費も医療費控除の対象になりますが、あくまで子どもを病院へ連れて行くということが前提となります。
つまり、入院している子どもの面会をするために保護者が支払った交通費は医療費控除からは除外されるので注意してください。
定期的な健康診断や人間ドッグだけなら費用は除外される
人はいくつになっても健康であることが大切ですよね。そのために定期的な健康診断をするように求められているのですが、健康診断の結果、残念ながら異常が見つかるケースもあります。
最近では健康診断で初期の大腸がんが見つかったというケースを耳にします。もし健康診断で異常が見つかった場合には、その後は病院を受診して見つかった疾病の治療が始まることなります。
基本的には健康診断や人間ドックの費用は医療控除の対象外ですが、健康診断で異常が発見され疾病の治療に進んだ場合のみ、治療費だけでなく健康診断にかかった費用も医療費控除の対象とすることができます。
薬局で購入した医療品はセルフメディケーション税制を利用して申告しよう
薬局で風邪薬や湿布、花粉症の薬などを購入する場合があると思いますが、これらは病院は受診していなくても自身の治療に必要なものとして医療費としてみなすことができます。
薬局の薬って結構使うよな。な。
ただし、この場合はセルフメディケーション税制を利用することになります。先ほどから紹介している通常の医療費控除と合算して利用することはできず、併用して利用することもできません。
セルフメディケーション税制は、平成29年1月1日から令和8年12月31日までの期間限定で特例として施行されている医療費控除の1つです。
薬局などで販売されている一般用医療薬品等購入費の合計額のうち、12,000円を超えた金額に対して88,000円を限度としてセルフメディケーション税制を利用による医療費控除を受けることができます。
セルフメディケーション税制についてはこちら≫≫医療費を支払ったとき(医療費控除)
医療費控除とセルフメディケーション税制は、どちらか一方しか利用できない医療費控除となっているので、自分自身に合った利用方法を考えてみてください。
【まとめ】医療費控除の知識を深め、節税方法を考えよう!
確定申告の時期はあっという間に終わってしまいます。医療費控除を利用するには金額の確認や医療費控除のための準備に時間がかかってしまうので、早めに準備を整えていきましょう。
- 生計を一にする家族や親族の医療費は合算することができる
- 医療費控除は10万円以上が必要だが、所得によっては10万円以下でも利用できる
- 医療費控除の対象となる医療費
- 医療費控除とセルフメディケーション税制のどちらか一方の利用のみ
なんか意外と知らんことが多かった気がするわ。
医療費控除についてはご存知の方も多くいらっしゃいますが、特に間違って認識されやすいものが医療費控除とセルフメディケーション税制です。
誤った認識で医療費控除を行わないように気をつけて、より節税できるように医療費控除を利用してみてくださいね。
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