脱サラを考えてる?国民健康保険と社会健康保険を比較して4つの違いを知っておこう
みなさんはフリーランスや個人事業主などが加入する国民健康保険と会社員などが加入する社会健康保険とでは、どのような違いがあるのかをご存じでしょうか。
健康保険料の違いや受給できる制度の違いなど、国民健康保険と社会健康保険では似ているようで実は大きな違いが存在します。
そういえば、なんとなくしか知らへんなぁ。
どちらの健康保険も医療費の自己負担軽減のために利用できるものですが、もし今後フリーランスや個人事業主として脱サラを目指す場合には、働き方により加入する2つの健康保険の相違する内容を知っておく必要があります。
脱サラから個人事業主やフリーランスへの転身を考えている方だけでなく、これから結婚や出産を考えている働く女性にも、ぜひ国民健康保険と社会健康保険を比較した4つの違いについて確認しておいていただきたいと思います。
国民健康保険と社会健康保険で4つの違いを確認しよう
国民健康保険と社会健康保険ではそもそも運営している母体が違うことは、説明するまでもなくみなさんもご存じだと思います。
例えば会社員であれば協会けんぽなどに加入し健康保険証が発行されます。しかしフリーランスなどは都道府県と自治体で運営されている国民健康保険証を発行してもらうことになります。
俺もそのうち脱サラ考えてるからなぁ。そろそろ勉強しとかないとあかんな。
やっぱりマジで考えてるねんな(笑)
いろんなこと勉強してからせなあかんで。
我が家の旦那くんのように脱サラを考えている人は、国民健康保険と社会健康保険の違いをよく理解しておかなければ、いざというときに大変なことになってしまうので、ここで勉強しておいてくださいね。
保険料の決まり方が違う⁉前年所得と標準報酬月額の違い
もう皆さんすでにご存じだと思いますがあえて解説したいと思います。健康保険に対する保険料の計算方法は国民健康保険と社会健康保険とでは大きな違いがあります。そこで改めてそれぞれの保険料の計算方法について違いを考えてみましょう。
そんなに保険料の違いってあるもんなん?同じ健康保険やのに…
根本的に運営方法が違うから、やっぱり保険料にも違いが出てくるねん。
国民健康保険の場合、確定申告などで確定した前年1月から12月の所得金額によって計算され、2つの保険料から決定されます。
- 基本料金という意味をもつ均等割額
- 所得によって計算され付加保険料となる所得割額
所得が一定以下となる場合には、均等割額のみの保険料となり所得割額は加算されません。
基本的には計算された国民健康保険料は全額支払わなければなりませんが、所得が一定以下などの要件を満たす場合には国民健康保険料の軽減(20%、50%、70%)が認められています。
国民健康保険って、保険料を払われへんかったら保険料減らしてくれんの⁉
所得が低かったり、障がい者やったりしたら申請することで保険料の軽減制度を利用することができるねん。
では社会健康保険の場合の保険料はどのように計算されるのかご存じでしょうか。
社会健康保険料が変更となるのが毎年9月とされていますが、保険料には毎年4月から6月の3カ月間の平均給与が基礎となって標準報酬月額から計算されています。
保険料は全額負担の国民健康保険とは違い、労使折半となるので計算された社会健康保険料の負担は半額となりますす。ただし、退職後に任意継続を選択した場合には、保険料は全額負担することになるので注意が必要です。
だから退職する時って任意継続の保険料と国民健康保険の保険料を比べて安い方を選ぶねんな。
一緒に住む家族の健康保険はどうなる?扶養家族とその保険料
同居する家族がいる場合、国民健康保険と社会健康保険とでは扶養の有無が大きな違いとなっており、この違いが保険料の金額に差が出てくると言っても過言ではありません。この扶養の有無がある違いについてよく質問を受けるので改めて確認しておいてください。
え⁉扶養で入られへんとか、そんなんあるん⁉
なんか社会健康保険で扶養があるイメージが強い人が多いみたいやなぁ・・・
国民健康保険には、扶養という概念がないため税制上の扶養家族であっても家族それぞれが国民健康保険に加入する必要があります。
つまり、国民健康保険に加入者する1人1人の所得に対して国民健康保険料が計算されることになるので、家族それぞれが保険料を支払う必要が出てくるということなのです。
国民健康保険は、国民皆保険制度の背景から社会健康保険に加入できない人の受け皿として存在しているとされているため、扶養という名の概念がありません。
国民健康保険に加入すると、加入した家族1人1人に国民健康保険料が発生することになりますが、保険料の納付義務は世帯主となります。
仮に世帯主が会社員で社会健康保険に加入していても、同じ世帯のなかに国民健康保険への加入者がいれば、その人の保険料は世帯主に保険料納付義務が発生します。
マジか・・・国民健康保険に扶養がないの、初めて知ったわ…
脱サラするんやったら、こういう細かい知識も必要になるから覚えとかなあかんで。
逆に社会健康保険の場合では、社会保険上の扶養というものが存在するため、同じ世帯で生計を一にする親族で一定以内の収入であれば、保険料の負担が発生することなく第3号被保険者として社会健康保険の扶養に加入することが可能です。
この第3号被保険者は人数が増えた場合でも、社会健康保険料の負担者である第2号被保険者が負担する保険料に変わりはありません。
人数増えても変わらんの⁉それも知らんかった・・・
ただし社会保険の扶養には注意点があります。2022年10月から厚生年金の加入対象者を拡大するために制度改正が行われることになっています。
一定以上の収入(130万円以上)や働く環境(106万円以上)よっては厚生年金の加入が必要となり、それがもとで今まで扶養に入っていた家族が、ご自身で社会健康保険への加入しなければならないケースが発生します。
家族が絶対に扶養に入れるとは限らへんってことになってくるな。
病気や怪我で働けなくなったときはどうなる?まさかの自助努力⁉
病気や怪我で働けなくなったとき、毎月の給料の代わりに保障される制度を傷病手当金制度と言いますが、実は傷病手当金制度は社会健康保険特有の制度であるということはご存じでしょうか。
コロナ過になり、よくこの質問を受けるようになりましたが、それまでは意外にも知られていなかった事実のようです。
そうなん⁉そしたら国民健康保険で働かれへんようになったら、どないしたらいいん?
自助努力になるから就業不能保険とかで収入カバーするしかないなぁ…
国民健康保険には傷病手当金制度というものは存在しないため、国民健康保険に加入しているフリーランスや個人事業主で、怪我や病気で仕事ができず収入が絶たれてしまうリスクを考えた場合、自助努力が必要不可欠となります。
民間の生命保険会社などで販売されている就業不能保険に加入するなど収入が途絶えた場合のリスク管理を行い、常日頃から準備をしておくことが必要です。
ただしコロナ過のいま国民健康保険の制度に風穴があき、令和2年1月1日まで遡ってコロナによる傷病手当金を例外的に受給することが可能となっていますので覚えておいてください。
ただし、あくまでコロナ過による例外的処置となる国民健康保険の傷病手当金制度になるので、新型コロナウィルス感染に関係のない疾病では国民健康保険による傷病手当金制度を利用することはできません。
ただし同じ国保でも申請できない人もいるから次の記事で確認を!
社会健康保険による傷病手当金制度では、働けなくなった場合には傷病手当金を受け取りながら、生活費への心配を軽減させ治療に専念することが可能です。
この傷病手当金制度は、以前は受給開始から1年6ヶ月まで受給することが可能でしたが、2022年1月より受給開始から通算して1年6ヶ月まで受給することができるように変わっているので確認しておいてくださいね。
出産に関する補助金や手当金。どちらに手厚い制度がある?
出産に伴う出産育児一時金は国民健康保険、社会健康保険のどちらに加入していても医療費を補填するということを目的として支給されることになります。
出産の一時金って「子どもが生まれたからおめでとう」っていう意味の一時金やと思ってたわ。
なるほどな(笑)
でも、出産には分娩や入院が必要になるから出産費用の補填っていう意味で支給される感じやな。
出産が終わると翌年の確定申告で出産に関わる医療費を、医療費控除として利用することができます。
ただし出産育児一時金を受け取った場合、医療費の補填金としての控除となって医療費控除を計算して利用することになりますので、間違わないように医療費控除を利用するように気をつけてくださいね。
また、働く女性の場合は産前産後に休暇を取ることになりますが、この休暇期間に給与の支払いを受けなかった場合には出産手当金と呼ばれる収入に対する保障を受け取ることができます。
ただし、この制度は社会健康保険のみとなっているため、国民健康保険に加入されている方が受け取ることはできません。
やっぱり社会保険の方が制度がいろいろあるよなぁ。
働く人が入る社会保険やから、収入に対する保障があることが国保との大きい違いやなぁ。
医療費の補助として支給される出産育児一時金とは違い、出産手当金は収入に対する保障になりますので、出産手当金を受け取っても確定申告で医療費控除における医療費の補填金の対象にはなりません。
再確認!国民健康保険と社会健康保険の違い
ここまで国民健康保険と社会健康保険の大きな違いについて解説してきましたが、脱サラを考えている人にとっては今後とても重要な知識となりますので、改めて国民健康保険と社会健康保険の違いを一覧表で再確認しておいてください。
国民健康保険 | 社会健康保険 | |
保険料は? | 前年度の所得で計算される | 4~6月の所得で算出 |
保険料の負担は? | 加入者が全額負担、支払義務は世帯主 | 企業と加入者の労使折半 |
保険料の軽減? | 申請し認められれば軽減可能 | × |
家族の扶養? | × | 一定所得以下で第2号被保険者として可 |
傷病手当金 | × | 〇 |
出産一時金 | 〇 | 〇 |
出産手当金 | × | 〇 |
脱サラを考えて、心機一転フリーランスや個人事業主として新しい道をある歩いていこうとする場合、避けては通れないものが社会健康保険から国民健康保険への移行です。
会社員から個人事業へ転身する際には、どうしても新しい道への準備ばかりに時間が取られ、意外と国民健康保険や社会健康保険といった身近なものに対して目が行き届かなくなってしまいます。
こういう勉強を学校で教えてくれた方が人生の為になるよな。
最近ではこういう勉強も少し出てきてるって聞いたけどな。
特にずっと社会保険に加入していた会社員ならではの、あるあるパターンとなっているように感じます。改めて国民健康保険と社会健康保険の違いについて、この機に復習しておいてくださいね。
よくある質問で他に知っておいた方がいいことってなに?
コロナ過により副業をされている会社員が増えた背景からか、フリーランスや個人事業主として脱サラを考えている方々から相談を受けることが多くなったような気がします。
そんな方々からよく質問される内容を一部だけ紹介したいと思いますので、これから新しい道を切り開いていくとい志を持たれている方に、ぜひ参考にしていただければと思います。
社会健康保険の任意継続は損をする?得をする?
会社を退職する場合、社会健康保険を任意継続するか国民健康保険へ加入するかの選択に迫られます。
任意継続は2年間の継続が可能ですが、任意継続をしようとする場合は社会健康保険の資格を喪失した日から20日以内に申請書を提出することが必要です。
任意継続ってなんかメリットある?めっちゃ保険料が高い気がするねんけど…
任意継続したときって独身やったんやろ?そら保険料高く感じるわ。
社会健康保険を任意継続すると、それまでの労使折半だった保険料は全額自己負担となるため保険料は高くなります。
しかし国民健康保険には健康保険上の扶養制度が存在しないため、扶養家族が多い場合には任意継続した方が保険料が安くなるケースがあります。
国保にしたら、今までの扶養人数×保険料になるからなぁ。
ここで、よくありがちな比較が社会健康保険料と国民健康保険料との比較について補足しておきたいと思います。
社会健康保険料には厚生年金保険料も含まれています。それなのに、なぜか国民健康保険料だけを比較してしまっているケースが多く見られます。国民健康保険に加入すると国民年金保険料も支払う必要があるので、比較する場合には国民年金保険料の存在を忘れないようにしてくださいね。
ちなみに、社会健康保険のみに存在する傷病手当金や出産手当金の支給ですが、これらの制度は収入を補うものとして扱われているため、任意継続した場合には原則として支給対象外となっていますので注意が必要です。
夫婦で自営業と会社員の場合、子どもはどちらの健康保険?
やはり新型コロナの感染拡大は、多くの業界に影響を与えていることを実感する質問が、以下のように夫が自営業、妻が会社員という夫婦の共働きであった場合、子どもはどちらの扶養に入れるべきなのかというものです。
- 会社員から自営業へ転身しようとする夫
- 会社員の妻
- 夫の扶養として社会健康保険に加入している子どもが2人
このような4人家族の場合、「子どもの健康保険はどのようにすれば得か」ということですが、まず国民健康保険には扶養という概念がないため自営業者になろうとする夫が加入する国民健康保険の扶養として子どもが加入することはできません。
つまり、子どもが国民健康保険に加入する場合は、子ども2人分の国民健康保険料が発生することになります。
子どもでも保険料が必要やねんな・・・
生まれたての赤ちゃんでも国民健康保険に入った場合は保険料が発生するねんで。
では、会社員である妻の扶養として社会保険に加入することは可能なのかと言えば、それは可能です。扶養という言葉には、税制上の扶養と健康保険上の扶養という2つの意味があります。
ここでは健康保険上の扶養となるだけですので、会社員である妻の扶養として子どもが妻の社会健康保険に加入し、保険料が発生しない第3号被保険者となることができます。
なんか大黒柱としての威厳がなくなる気がするなぁ…
それやったら税金上で大黒柱を発揮したらええねん。
ただし気をつけておきたいのは、夫婦の間で年収が多い方に健康保険上での扶養が認められているという原則があることです。年収の差については、今後1年間に見込める収入が基準となるので夫が自営業を行おうとしている場合には、収入の見込み金額の判断が困難ということから確定が難しいと思います。
こういった場合には、最終的に妻が加入する社会健康保険の組合などが個別判断することとなりますので、夫の収入見込みを判断した上で、妻が子どもの健康保険上の扶養が可能かどうかを確認する必要があります。
【まとめ】独立する前に国保と健保の違いを理解しよう
国民健康保険と社会健康保険では、それぞれの面で大きな違いがあることを改めて知っていただけたでしょうか。
いずれ会社員から独立して生計を立てようと考えている方々にとっては、必ず押さえておくべき国民健康保険と社会健康保険の違いをご紹介してきました。
- 保険料の計算方法と負担方法が違う
- 扶養制度についての概念の違いがある
- 傷病手当金は社会健康保険のみに存在する
- 出産にかかわる制度に違いがある
なんとなく知ってるやつもあったけど、扶養はどっちの健康保険でもあると思ってたわ。
国民健康保険に扶養があると勘違いされやすいのは、手続きの流れによるものかもしれません。
- 世帯主の加入手続き
- 家族の加入手続き
- 世帯主に合算して保険料の納付が必要
会社を退職し新たに国民健康保険に加入する場合には、様々な違いに気づくことになります。
ここで紹介したものは、2つの健康保険に関する違いの基礎となっていますので、復習の意味で理解を深めていただければと思います。
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