会社員にも必要?働けなくなったときの就業不能保険にはどんなメリットや注意点がある?
もしも大病を患ったり怪我を負ったりして長期にわたる療養を余儀なくされた場合、今まで当たり前だと思っていた生活が一変したら、あなたならどうしますか?
生きていくためには仕事をして最低限の生活費を稼ぐ必要がありますが、心身共に健康でなければ満足に働くことは困難となります。
万が一働けなくなってしまったときのために貯金をしているという人は問題ないと思われがちですが、働けない期間というものは予測できるものではありません。もし長期間の療養が必要になったとき、預貯金で賄えるとは限りません。
病気や怪我、うつ病などにより長期間の療養が必要となってときのリスクへの備えとして、民間の保険会社で販売されている就業不能保険はどんな人が備えておくべきなのかを考えてみたいと思います。
就業不能保険のメリットやデメリットを知り、もし検討をするなら加入する前に確認すべき注意点も併せて紹介します。
働きかたによって違う収入に対する公的保障とは?
人それぞれ働く場所が違うように、働き方にも違いがあります。公務員や会社員のように企業などに雇用されて働く人もいれば、自分自身で経営を行うフリーランスや自営業というケースもあります。
皆さんもよくご存じだと思いますが、公務員や会社員だと社会保険へ加入しているケースが多く、もしも働けなくなった場合には社会保険からの公的保障を受けることで生活費の足しにすることが可能です。
フリーランスや自営業の方々が受けることができる公的保障がないわけではありませんが、公務員や会社員の方々と比べると限定された公的保障となっています。
公務員や会社員は「社会保険」からの収入保障がある
公務員や会社員の方々のように給与を受け取って働いていると、毎月の給与から社会保険料を天引きされているケースがほとんどです。社会保険には健康保険や厚生年金、雇用保険や労災保険などがあり、もしも働けなくなったときにはこれら4つのパターンから収入に対するリスクに備えることができます。
- 健康保険から「傷病手当金」
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病気や怪我により、連続して3日以上就労できなくなった場合健康保険に申請することで、休職して4日目から通算して1年6ヶ月が経過するまで傷病手当金を受け取ることができます。支給額は給与の約60%程度とされています。
ただし、申請するための条件として業務外の事由における病気や怪我であることや、休職期間中は給与を受け取っていないことが必要です。
旦那くんVenusちゃんも会社員で良かったよな。傷病手当、申請してるんやろ?
Venus働かれへんようになってしもたからな…
リアルに起きた!コロナワクチン接種で橈骨神経損傷⁉今後の対策を考える コロナワクチン接種は任意とはいえ、業務上どうしても接種しなければならないケースは多々あります。体質や持病で接種できないといった方々以外は、どんどんワクチンを…傷病手当金を受け取りながら回復を待っていても、復職が叶わずに退職という判断をするケースもあると思いますが、条件さえ満たしていれば退職後も傷病手当金を引き続き受け取ることもできます。
- 厚生年金から「障害年金」
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病気や怪我の初診日から1年6ヶ月が経過した日を障害認定日として、1級から3級の該当する障害状態に対して決まった障害年金を受け取ることができます。3級に該当しなかった場合には障害手当金が支給されます。
症状固定などにより初診日から1年6ヶ月以内に満たなかった場合には、症状固定となった日が認定日となり障害年金の申請を行うことができます。
うつ病でも受給できる!?長期にわたる療養が必要なら障害年金の申請も視野に入れよう 新型コロナウィルスが流行し始めた2020年からコロナ過へ突入し、人々は大きなストレスを抱える生活を余儀なくされました。収入が激減したり仕事を失った人も少なくあり… - 雇用保険から「失業手当金」
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雇用保険には、育児休業や介護休業など退職せずに給与の変わりに収入保障される給付金や、皆さんがよくご存じの失業手当などの代表的な収入保障があります。
失業手当は給付日数が90日から360日まで幅広い設定があり、人それぞれの状況により日数は変わります。ただし、失業手当は安心して再就職先を探す支援として活用されるものなので、働くことができるということが前提となります。
傷病手当金を受給している最中は、働けないということが前提で受給しているはずなので、失業手当と同時に受け取ることはできないので注意が必要です。
雇用保険手続きについてはハローワーク インターネットサービスより詳しく確認できます
- 労災保険から「休業補償」
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業務災害と認められれば休業補償給付、通勤災害であれば休業給付が支給されることになり、休業特別支給金と合わせて直近3ヶ月の平均給与の約80%を受け取ることができます。
支給は給与が支払われなくなった4日目からとなりますが、通勤災害の場合は初日から3日目までは60%を受給することが可能です。
労災による休業補償は受給できる条件さえ満たしていれば期間に制限はありません。ただし、医療効果が期待できなくなると打ち切られてしまうケースや、障害が残った場合には障害補償年金を受け取れる場合もあります。
労災について詳しく知りたい方は厚生労働省「労働災害が発生したとき」をご覧ください
フリーランスや自営業に対する公的保障はどんなものがある?
企業に属していないため社会保険に加入できないフリーランスや自営業の方々には、公務員や会社員のように多くの公的保障があるわけではありません。
加入している国民健康保険や国民年金により受けることができる公的保障は、社会保険から比べると大きな自助努力が必要となるため公的保障による生活費などの保障はないに等しいと考えておいた方がよいと言えるでしょう。
- 国民健康保険による「傷病手当金」
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原則として国民健康保険には傷病手当金というシステムは存在しません。つまりフリーランスや自営業の方は傷病手当金を申請することができないのです。
ただし例外的に新型コロナウィルスに対する支援策として、国民健康保険でも傷病手当金の申請が可能となっています。コロナ過の今だけ申請することが可能で、新型コロナウィルスに起因していなければ申請することはできません。
新型コロナウィルス対策で国民健康保険に傷病手当金⁉申請できる人や制度について解説 全世界に猛威を振るう新型コロナウイルス。国からの補助にも頼れず、国民みなさんが苦しい思いをして日々を過ごしています。みなさんの周りでコロナウィルスに感染した… - 国民年金による「障害年金」
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フリーランスや自営業の方々が唯一受けることができる公的保障が障害年金です。
しかし公務員や会社員とは違い、障害の状態が1級もしくは2級に該当していなければ障害年金を受給することはできません。3級や障害手当金は厚生年金による上乗せや手当金となるため、厚生年金に加入していなければ受給することはできないからです。
障害年金の等級については日本年金機構「障害等級表」をご覧ください
自営業って、ほんまに保障ないよな…
自営業の人とかは特に自分自身でリスクに備えておかなあかんねん。
もしも働けなくなったとき、フリーランスや自営業の方々は事業の継続だけでなく生活までも多くのリスクを伴います。収入が途切れた場合のリスクに備え、自分自身で準備をしておくことが大切です。
どんな人が就業不能保険を必要とする?メリット・デメリットを考える
働けなくなったときに途絶えてしまう収入を補うための保険として、民間の生命保険会社では就業不能保険が販売されています。損害保険会社が販売する所得補償保険とは類似しますが、別の仕組みとなっていますので間違いのないようにしておいてください。
最近では医療保険と並んでニーズが高まっている就業不能保険は、どのような目的で加入するかによって保障内容を検討しなければなりません。
多くの生命保険会社で販売している就業不能保険は保障内容が様々となっているため、メリットやデメリットもよく考えた上で加入を検討するようにしておいてください。
就業不能保険の必要性が高いのは誰?自営業者だけとは限らない⁉
どんな働き方をしていても働けなくなったときの収入減は、生活に直結してしまうリスクがあります。公的保障が少ないフリーランスや自営業の方々は、なおさらこのようなリスクに備えておく必要があります。
では公務員や会社員の人々には就業不能保険への加入は必要のないものだと思いますか?
傷病手当とかあるしなぁ…生活くらいなんとかなるんじゃないん?
いくら傷病手当金を受給することができるとはいえ、受給できるのは給与の約60%となります。無収入とはならないまでも収入減となることには違いありません。そして傷病手当金を受け取っている間も社会保険料は支払わなくてはならないため避けられない出費にもなります。
そんななかで、住宅ローンを返済中だったり子どもの教育費の月謝がある場合には、生活費として手元に残る傷病手当金は決して多い金額とは言えないはずです。
確かに俺も住宅ローンあるから支払いキツイわ…
公的保障だけやと足りへんっていうケースが多いねん。
- フリーランスや自営業の人
- 車のローンや住宅の返済をしている人
- 長期の生活費を預貯金で賄うことが困難な人
- 子どもの教育費が必要な人
このように考えると、公的保障が少ないフリーランスや自営業の方々だけでなく、公務員や会社員の方も生活の実態に合わせて就業不能保険への加入も検討しておく必要があります。
就業不能保険のメリットは?デメリットもあるの?
就業不能保険による最大のメリットは、就業できない期間は毎月継続して給付金を受け取ることができることです。
入院すると加入している医療保険から入院給付金を受け取ることもできますが、健康保険の対象外となる差額ベット代などの自己負担が発生し、生活費を補うまでには至りません。
毎月の支払いに病院代やろ…そら足りへんわなぁ…
医療の発達とともに入院できる期間も短くなり、短期入院と自宅療養がセットになって治療が進められる傾向にあるため、入院日数から計算される医療保険では、より生活費に対する備えが必要とされてきています。
「もし世帯主が長期にわたって働けなくなったら」と考えた場合、68.7%の方が生活資金に対する不安を抱えているそうです。(生命保険文化センター 平成30年度「生命保険に関する全国実態調査」世帯主が就労不能となった場合の必要生活資金に対する安心感・不安感より)こうした不安を払拭できるということも、就業不能保険によるメリットの1つと言えます。
あたしも不安やわ…
働かれへんようになったんはVenusちゃんやったけどな(笑)
デメリットは、働けなくなったからと言ってすぐに給付金が支払われるというわけではないということです。一般的に支払い対象外期間として60日が設定されることが多く、就業不能となってから60日後から給付金が支払われることになります。
また、各保険会社によって給付条件や就業不能状態という定義に違いがあることで、デメリットとなってしまうケースがあることも忘れてはなりません。
- うつ病など精神疾患は支払い対象外となる商品がある
- 最高5年までの支払いという商品がある
- 障害状態になった場合は支払い対象外となる商品がある
比較的新しい商品として販売されている就業不能保険は、保険会社によって保障が様々となっているため一長一短です。加入する際には十分な事前確認をしておくようにしておいてください。
どうやって決める?就業不能保険を検討する際のポイント
ご自身の働き方によって準備しておきたい就業不能保険の保障内容は相違します。そのためには様々な保険会社の就業不能保険を確認することが大切です。
どのような就業不能保険を選ぶかは3つのポイントを確認することで、ご自身の必要とする保障内容に近づけることができます。
- 給付金の支払い対象となる要件
- 支払対象外期間と必要保障額
- 給付金支払い期間
もちろん保険を継続していくためには保険料設定も必要なことですが、いざというときに役に立たなければ本末転倒となってしまいますので、必ず保障内容はチェックするようにしておいてください。
就業不能となった原因はどんなものが対象?保障の範囲を確認しよう
うつ病などの精神疾患だけでなく、異常分娩などの場合も支払い対象の要件から外れてしまう就業不能保険もあるようです。
さらに障害等級が1級や2級に該当した場合も支払われるという就業不能保険が一般的となっているなかで、中には障害等級に該当しても支払い要件に当てはまらない就業不能保険も販売されています。治療が終わっても後遺症が残って働けない状態が続いた場合には、支払い要件から外れてしまうというケースもあるのです。
それって意味なくない⁉
公的保障も踏まえて考えないとあかんねんけど、どうせやったら就業不能保障でも備えておきたいやろ。
障害等級1級や2級の場合、フリーランスや自営業の方も受給要件を満たしていれば障害年金を受け取ることもできますが、ご自身の必要保障額をよく検討した上で障害状態になった場合にも保障が必要だと考える場合には、よく保障内容を確認しなければなりません。
その他、最初の一定期間は保障金額が少なく一定期間後は保障金額が上がるハーフタイプと呼ばれる保障内容を選択できる就業不能保険など、様々な種類がありますのでたくさんの保険を比較してみてください。
保障対象外期間は何日にする?必要保障額もよく検討しよう
働けなくなってから一定期間は保険金の支払いを受けることができない期間のことを保障対象外期間と呼ばれていますが、一般的には60日と設定されている就業不能保険が多いようです。
60日ではなく180日などに変更できる保険種類もありますが、預貯金などで生活費に対する不安がないのであれば問題ありませんが、基本的には60日で設定しておいた方が無難ではないかと思います。
生活費に不安があるからこの保険に入るんやろ?
うん。不安なければ入る必要もないやろうからな(笑)
就業不能保険に加入しようとする際には、ご自身の必要保障額というものを知っておく必要があります。理想は公的保障で不足する生活費を就業不能保険で補うというものとなりますので、会社員の方は傷病手当金なども踏まえて考える必要があります。
自営業の方は公的保障が受けられない分、ご自身の生活費がどれくらい必要かによって就業不能保険による補償額を考えなければならないということになります。
重要ポイント!給付金の支払い期間はいつまで?
保障内容によっては障害状態では支払い対象とならないケースがあることをご紹介しましたが、この場合は公的保障があるため万が一の際には障害年金を受給することもできます。
しかし障害状態ではなく、治療や療養によって長期間働けなくなってしまった場合、給付金の支払い期間が短期間となっていると途中で支払い期間満了とともに契約が消滅してしまうという恐れがあります。
まじか⁉でもそんな何年も治療で働かれへんことって、どんな病気とかなん?
たとえば…うつ病とか?10年以上も働かれえへんっていうこともあるみたいやで。
就業不能保険のなかには、5年という短い期間で支払い期間が終わってしまうという種類もあれば、就業不能の状態が続く限り給付金を受け取ることができる種類もあります。
さらに一度就業不能の状態になると保険期間満了まで給付金を受け取ることができる種類もありますので、短期間の保障が必要なのか長期の備えが必要なのか、ライフステージに合わせて加入することをオススメします。
【まとめ】生活費に不安のある人は就業不能保険の検討が必要
もしも病気や怪我で働けなくなってしまったとき、生活費に対する不安があるのであれば公務員や会社員、フリーランスや自営業など働き方に関係なく、就業不能保険への加入を検討してみることも必要です。
ただし、働き方によって受けることができる公的保障に違いがあるため、働き方や生活の実態に応じてご自身に合った必要保障額を確認しておくことが大切です。
- 公務員や会社員は、公的保障で不足する生活費を補う保障額が必要
- フリーランスや自営業者は、生活していく上で必要となる保障額が必要
民間の生命保険会社で販売されている就業不能保険は、保険会社によって保障内容などに違いがあるため加入しようとする場合には、比較するなど事前準備が必要となります。
元気に働けて平穏な日々を送るということは、何気ないことですが保障された毎日ではありません。働けなくなるということは誰にでも起こりうるリスクですので、ぜひこの機会に働けなくなった場合のリスクについて考えてみてはいかがでしょうか。
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