高額な医療費が返金⁉健康保険の高額療養費制度や限度額適用認定証ってどんな制度?
医療は日進月歩で進化していると言われており、そのため医療費が高額になってしまうことは仕方のないことかもしれません。
しかし、病気や怪我で思いがけない出費となる医療費は、医療費がかさむごとに経済面に大きな影響を与え時として過度なストレスを与える可能性もあります。
もしも高額な医療費が必要となった場合、自分自身のみならず大切な家族を守るために医療費の自己負担額について学んでおく必要があります。
加入している健康保険では自己負担額の軽減が経済状況の悪化を防いでくれる可能性がありますが、医療費負担を軽減できる範囲は誰でも一律というわけではないので、その制度や条件などについて覚えておいてください。
医療費が高額に⁉そんなときは高額療養費制度を利用しよう
医療費が高額となってしまった場合、加入している健康保険による高額療養費制度を利用して医療費の負担額を軽減させる方法があります。
この高額療養費制度は加入している健康保険の種類に関係なく利用することができるため、健康保険に加入している人であれば誰でも利用することが可能です。
国保も健保も関係なく利用できるねんで。
ただし、この高額療養費制度による医療費の軽減と言っても人それぞれの経済状況から、同額の医療費軽減ではなく収入により軽減される金額に違いがありますので、利用する際には必ず確認するようにしておいてください。
1ヶ月の医療費が限度額を超えたら利用できる
医療費の自己負担が限度額を超えた場合において高額療養費制度を利用できるのは、毎月1日から月末までの1ヶ月間に発生した医療費となります。
たとえば4月20日~5月19日の1ヶ月間で高額な医療費が発生したとしても、4月と5月それぞれの月で医療費の計算をすることになり、月をまたいでの医療費合算はできません。
俺、治療の最初から最後まで医療費やと思ってたで…
それやと持病で通院してる人は全員ってことになるやん(笑)
また、医療費の自己負担額においては収入に応じて段階的に限度額が決められているので、高額療養費制度を利用する方全員が同額の軽減となることはありません。
さらに年齢によっても、医療費の1ヶ月の上限額が決められているので覚えておいてください。
高額療養費制度ってどこに申請すればいいの?
国民皆保険制度によって皆さんが加入する健康保険は大きく分けて2種類あり、会社員や公務員など給与の支払いを受けている方々が加入する社会健康保険と、個人事業主やフリーランス、無職の方々が加入している国民健康保険となります。
高額療養費制度を利用する場合、2つの健康保険で共通しているのは医療費の領収証を提出する必要があることですが、申請の方法はそれぞれ違いがあるので注意が必要です。
- 市区町村自治体より申請書が郵送で届く
- 申請書と医療費の領収証を市区町村自治体へ提出
- 自己負担限度額を超えた医療費が払い戻しされる
へぇ~市役所から勝手に送られてくるねんな。それやったら自分で計算せんでいいから楽やな。
国保は楽やな。でも社会保険は自分で申請が必要やから覚えとかないとあかんで。
- 医療費が自己負担額を超えたら健康保険の加入先へ申し出して申請書をもらう
- 申請書と医療費の領収証を健康保険の加入先へ提出
- 自己負担限度額を超えた医療費が払い戻しされる
制度を知らんかったら放置してしまうな・・・
高額療養費制度は2年経過すると申請できなくなってしまうので、該当する場合は忘れずに申請するようにしてください。
社会保険に加入している人が高額療養費制度を利用する場合は、ご自身の年齢や年収から医療費の自己負担額の限度がどれくらいになるのかを、よく把握しておく必要があります。
医療費の自己負担額は年収以外に年齢も関係する⁉
医療費が高額となったとしても、社会保険に加入してしている方だと自分自身の自己負担限度額を知らなければ、自己負担を超えているかどうかの判断ができず申請に至らないといったケースも少なくありません。
自己負担限度額を知るには年収が大きく関係しますが、年収に加え年齢も関係することを忘れないようにしておいてください。
年入が大きく関係する⁉現役世代を含む69歳以下の場合
若い世代から現役世代などを含む69歳までの方が高額療養費制度を利用しようとする場合は、年収ごとに定められている1ヶ月間の医療費における自己負担限度額を確認する必要があります。
年収による適用区分 | 1カ月の医療費上限額 |
約1,160万円以上 | 252,600円+(医療費-842,200円)×1% |
約770万円~1,160万円 | 167,400円+(医療費-558,000円)×1% |
約370万円~770万円 | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% |
約370万円以下 | 57,600円 |
住民税非課税 | 35,400円 |
住民税の非課税世帯ってどんな場合が適用となるのかを知りたい方は、ぜひ下記の記事をチェックしてみてください。
70歳以上になると外来の上限額も設定されている⁉
高齢受給者や後期高齢者医療制度となる70歳以上の方は、69歳以下の方とは別の表によって年収ごとに定められている1か月間の医療費自己負担額を確認しなければなりません。
年収による適用区分 | 1カ月の医療費上限額 |
約1,160万円以上 | 252,600円+(医療費-842,200円)×1% |
約770万円~1,160万円 | 167,400円+(医療費-558,000円)×1% |
約370万円~770万円 | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% |
約156万円~370万円 | 57,600円 (外来:18,000円) |
住民税非課税Ⅰ | 24,600円 (外来:8,000円) |
住民税非課税Ⅱ※年金年収80万円以下など | 15,000円 (外来:8,000円) |
高額療養費制度の対象外って言われたけど…どういうこと⁉
医療費として支払ったものの高額療養費制度の対象外となる医療費が存在します。医療費の自己負担に変わりはないのに実際に申請したら高額療養費制度には当てはまらないというケースもあるのです。
高額療養費制度の対象外となってしまうものは主に3つに当てはまるものが該当しますので、自己負担額を計算しなければならない場合には注意して、自己負担額の合計から除外するようにしておいてください。
高額療養費制度の対象外となるものってどんなもの?
もし医療を受けていなくて必ず発生している食事代や居住費などを含め、診療にかかわる自己負担と言われているものは高額療養費制度の対象から外れてしまうことになるので、注意しておかなくてはなりません。
特に高額と言われている先進医療については技術料も自己負担の上、さらに高額療養費制度からも外れてしまうことになりますので、高額療養費制度をあてにしていると経済状況の悪化を招いてしまうことに繋がります。
高額療養費制度の対象外となる支払いは、主に以下の3つです。
- 医療に関係なく必要となる食事代や居住費
- 患者の要望による差額ベット代
- 先進医療の技術料
先進医療ってめっちゃ高いんやろ?それでも高額療養費に当てはまれへんの?
そやねん。そもそも先進医療って健康保険の適用外やねんで。
治療に必要やから先進医療を受けることになっても自己負担なん⁉何のための先進医療なん?
先進医療という言葉はよく聞きますが、その先進医療とはどういった治療法なのか、なぜ健康保険の対象から外れて全額自己負担となってしまうのかについて、詳しくご存知だとおっしゃられる方は多くないように思います。
旦那くんもきになっているようなので、少し話から逸れてしまいますが、少しだけ先進医療についてお話させて頂きます。
なぜ健康保険が使えない⁉先進医療って最先端の治療方法じゃないの?
治療に必要だから最先端の先進医療を選択するのではないのかと言われると、あながち間違いではありません。様々な治療を施した結果、先進医療を選択し治療を行うというケースが多く存在するからです。
それにも関わらず、先進医療は全額自己負担ということに疑問を感じてしまいますよね。
治療方法として健康保険に認められていれば健康保険が使えるねん。
先進医療は厚生労働省が認めた治療法には該当していますが、まだ健康保険適用の認定まで至っておらず健康保険の対象にするかを評価する段階にある治療法であることが、健康保険の適用外となる理由です。
診察や入院、検査、投薬など治療に必要な基本部分については健康保険が適用されますが、先進医療の技術に関する部分については全額実費負担となります。
医学は日進月歩なので、常に同じ医療技術が先進医療として登録されているわけではありません。今はまだ認められていない先進医療の中には近い将来、健康保険適用の対象となる治療法に変わる可能性があります。
更に自己負担を軽減できる⁉高額療養費制度の利用方法
ご自身で自己負担額がどれくらいの金額になるのかを計算したことがある方であればご存じかもしれませんが、高額療養費制度が利用できるほどの医療費の自己負担が発生することは少ないかもしれません。
しかし自分1人の医療費では自己負担額内であったとしても、医療費を世帯で合算するとどうなるでしょうか。場合によっては自己負担額を超える可能性も考えられます。
世帯で合算とかできるんや⁉
また、治療が繰り返し必要な場合などで、年間に何度か高額療養費制度を利用しているケースは更に自己負担の軽減に繋げることが可能となっています。
医療費における同一世帯での合算ができる。でも同一世帯ってなに⁉
住民票では1つの家に住んでいると同居家族という意味で同一世帯としていますが、医療費においては同じ同一世帯という言葉であっても世帯の意味が違うことに注意しておかなくてはなりません。
医療費における同一世帯の合算ができるのは、1つの健康保険証の中に住んでいる同居家族という意味になり、会社員であれば社会健康保険に加入している本人と、その健康保険の扶養に入っている家族が同一世帯としての対象となります。
(例)夫、妻、子どもの3人家族で夫婦ともに会社員で共働きで、子どもは夫が加入する健康保険の扶養に入っていた場合
- 夫と子どもは医療費における同一世帯
- 単独で健康保険に加入している妻は夫や子どもの同一世帯には入らない
そんなふうに決まってるん⁉そんなら全員が1つの健康保険の扶養に入ってた方がええんちゃうん?
まぁ世帯合算で高額療養費制度を利用することが多いならってなるんやろうけど…
健康保険の扶養については2022年10月から変化が起き、健康保険の扶養に入れなくなる可能性が高くなりますので、ぜひ働き方の参考にしてください。
高額療養費制度の多回数利用で、更に自己負担の軽減
高額療養費制度を直近1年間で3回以上にわたって利用していた場合、医療費は自己負担額の上限が下がり、多回数該当により医療費における自己負担額を軽減することができます。
ただし、この高額療養費制度利用の多回数による自己負担の上限額軽減においては、年齢や収入によって相違するので確認しておくようにしてください。
所得区分 | 本来の自己負担上限額 | 多回数による軽減後の上限額 |
70歳以上で現役なみの所得者 | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% | 44,400円 |
69歳以下の高所得者 | 150,000円+(医療費-500,000円)×1% | 83,400円 |
69歳以下の一般所得者 | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% | 44,400円 |
69歳以下の低所得者 | 35,400円 | 26,400円 |
高額療養費制度の返金っていつ?前もって対策しておくことも必要
必要な治療を受けることは大切ですが、その治療によって医療費が高額になってしまい家計を圧迫してしまうと言うケースが多々あります。
高額な医療費が必要となる治療が、数週間~1ヶ月程度であればすぐさま大きな影響を与えることはないかもしれませんが、もし継続した治療が必要となったときには高額な医療費が家計に大打撃を及ぼしてしまう可能性は考えておかなくてはなりません。
働けず収入が途絶え、更に医療費が必要。それでも生活費っているもんなぁ・・・
いくら高額療養費制度を利用できるからと言っても、自己負担額を超えた医療費がすぐに返金されるわけではありません。高額療養費制度を申請してから返金までに意外と時間を要してしまうことが、経済状況の悪化へ繋がるリスクがあります。
それは確かにやばいな・・・
高額療養費制度による医療費の返金までの期間を考えておくことも必要ですが、もし入院により前もって医療費が高額となることがわかっているなら、高額な医療費に対して別の対策を準備しておくことも必要となります。
そんなにかかるの⁉申請から医療費返金までの長い期間
国民健康保険や社会健康保険など加入している健康保険がどれであっても、高額療養費制度の申請を行ってから自己負担額を超えた医療費の返金までには通常3ヶ月程度の時間を要すると言われています。
つまり、高額療養費制度の申請をしてから医療費が払い戻しされるまでの約3ヶ月間は、医療費を立て替えている状態が続くことになります。
収入が途絶えると、3ヶ月は長く感じるなぁ・・・
蓄えがあったり、すぐに仕事に復帰できる場合には家計を圧迫する経済状況に陥ることはないかもしれませんが、今のご時世それだけの余力があるご家庭はごく一部といっても過言ではありません。
うちは絶対無理やな。でも、そしたら安心して治療できひんやん。
医療費の支払いって待ってもらうことできるんかな?
いやいや…そこ絶対無理って威張って言えることちゃうから・・・
入院した場合、1ヶ月ごとに医療費の請求となるのが一般的で、基本的には医療費を請求されれば支払わなければいけないと考えることが一般的です。
しかし高額な医療費を支払えないという場合には、前もって高額な医療費に対する準備を行っておけば、自己負担の限度額以上の支払いを回避することが可能な方法があります。
入院で医療費が高額になりそう⁉それなら先に準備しておこう
治療により入院を開始した時点で医療費が高額になる可能性が高くなることがわかっているなら、自己負担額を超える医療費を立て替える必要がある高額療養費制度ではなく、医療費の精算時に高額療養費制度が適用となる所得区分による限度額適用認定証を利用するという方法があります。
- 高額療養費制度は、自己負担額が超えた場合に後日返金される
- 限度額適用認定証は、医療費の精算時に高額療養費制度が適用される
ただし、この限度額適用認定証を利用するためには医療費を病院へ支払うまでに限度額適用認定証の申請を行い、限度額適用認定証を発行してもらう必要があります。
- 国民健康保険は、市区町村の自治体で申請・発行
- 社会健康保険は、加入している健康保険の窓口で申請・発行
高額療養費制度を利用した場合、支払いを終えた医療費に対して高額療養費制度の申請から返金までの手続きを行わなければなりません。
しかし、限度額適用認定証を利用することで病院への支払いは自己負担額のみとなり、自己負担額を超えた部分については病院から健康保険へ直接請求することになるので、支払いのために準備するお金は最低限ですむことになります。
確定申告での医療費控除!高額療養費制度を使ったら気をつけよう
医療費が一定以上の金額になると確定申告で医療費控除を受けることができるということは皆さんがよくご存じの通りです。
しかし、この医療費控除における医療費とはあくまで自己負担における医療費のことを指しているのを忘れてはいけません。
高額療養費に該当するってことは医療費がめっちゃ高いから医療費控除が使えるんじゃないん?
そうやねんけど、高額療養費制度で返金されてたら気をつけなあかんねん。
高額療養費制度を利用し、翌年の確定申告において医療費控除を受けようと考えている場合には、医療費の自己負担額について注意しておかなくてはならないことがあります。
高額療養費制度で返金されたお金は⁉医療費控除に含むの?
高額な医療費を支払った場合、確定申告で医療費控除を利用するケースが多くなりますが、必ずしも支払った金額全額が医療費控除として計算できるわけではありません。
医療費控除は医療費の補填があった場合にはその補填額を差し引きする必要があるのです。
例えば会社員で医療費の自己負担上限額が80,100円だった場合、高額療養費制度を利用した場合は80,100円を超えた金額は返金されることになり、返金されたあとの実質自己負担となる医療費は80,100円です。
もし独身でこの医療費以外に医療費がなければ、10万円以下となるため医療費控除を利用することはできなくなってしまうということになるのです。
そういうことなんかぁ…医療費控除が使える金額にならへんってことやねんな。
もし家族がいて世帯合算できる医療費があるなら、控除が使えるかもしれへんけどなぁ。
混同しやすい⁉高額療養費制度と医療費控除のちがい
よく耳にする質問が、高額療養費制度と医療費控除の違いについてです。2つの大きな違いは医療における自己負担額軽減と税金に関する軽減ですが、どうしても混同しやすくなる場合があるようです。
例えば医療費控除を利用すれば医療費が返ってくると認識してしまってるケースがよく見受けられるように感じます。医療費が戻ってくるのは自己負担額が上限を超えた場合に申請できる高額療養費制度であることを間違わないようにしなくてはいけません。
医療費控除とは、あくまで税金の軽減に繋げる役目となる所得控除となります。もちろんこの医療費控除を利用することは節税対策といえるものになりますので、こちらの知識も深めておいて損はありません。
【まとめ】いざという時の為に覚えておこう!高額療養費制度の利用方法
高額な医療費が発生した場合には、高額療養費制度を利用することによって医療費の払い戻しを受けることができます。高額療養費制度を利用するためには自分自身の医療費における自己負担の限度額を知っておく必要があります。
- 国民健康保険と社会健康保険では申請方法に違いがある
- 年齢や年収によって医療費における自己負担限度額が変わる
- 高額療養費制度の対象外となってしまう医療費がある
- 医療費は世帯で合算できるが、世帯の意味は住民票上での世帯とは意味が違う
- 高額療養費は払い戻しまでに時間がかかる
医療費が高額になってしまいがちな入院の場合、前もって限度額適用認定証の発行の申請を行っておくことで、医療費を支払う際にまとまったお金を用意する必要がなくなります。
返金までの期間を考えたら限度額適用認定証って大事やなぁ。
医療の発展とともに長寿大国となった日本では、治療における医療費は高額となってしまうことが避けられないケースは多々あります。健康を取り戻すために発生した医療費で家計が圧迫し生きにくくなってしまうことは本末転倒です。
今まで医療費が高額になったことがない人も含め、高額療養費制度や限度額適用認定証のことについてこれからは知識を持っておいてください。
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