うつ病でも受給できる!?長期にわたる療養が必要なら障害年金の申請も視野に入れよう
新型コロナウィルスが流行し始めた2020年からコロナ過へ突入し、人々は大きなストレスを抱える生活を余儀なくされました。収入が激減したり仕事を失った人も少なくありません。
そんなコロナ過のなか、以前にも増して急増している病気はどんなものであるかご存じでしょうか。あまりにも大きなストレスを抱えることにより発症し生活の基盤が根本から折れてしまうものがうつ病です。
障害年金というと重度な障害を持ってしまうことが前提で受け取れる年金だと思われがちですが、実は目には見えない内部疾患だけでなく、うつ病や統合失調症など精神疾患も含まれています。
コロナ過における生活を支える制度はいくつか存在していますが、うつ病と診断され療養生活が続いている場合には障害年金を受給して少しでも経済的なストレスを減らすという考え方もあります。もしも今うつ病で今後の生活に心配があるなら障害年金制度について検討してみてはいかがでしょうか。
社会保障制度のひとつ、障害年金制度ってどんなもの?
人生には誰しも安全で揺るぎのない生活が送れる保障はどこにも存在しません。実際にコロナ過において生活が大きく変化した人の数は計り知れません。そんな「もしも」のときに生活を維持するために利用できる社会保障が障害年金制度です。
病気や怪我により治療や療養のために長期にわたって働けなくなった場合、働いて得ていた給与の代わりとなる収入源が必要となることは生きていく上で欠かせないものとなります。そんなときに頼ることができる障害年金制度について、まずは制度の内容から確認してみましょう。
うつ病などの含まれる⁉障害年金における3つの障害状態とは?
病気や怪我によって法令に定められた障害等級表に該当するような障害を負ってしまった場合、障害年金を受給し生活の支えとすることができます。
この障害年金に対しては身体に関する障害だけだと考えられている方が多くいらっしゃいますが、実は該当するのは大きく3つの障害に分けて分類されており、様々な障害状態から受給申請の検討を行うことができます。
- 外部障害
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視力や聴覚、手や足など外部における障害の状態が該当します。
- 内部障害
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呼吸器疾患、心疾患、肝疾患、腎疾患、血液疾患、循環器疾患、がん、糖尿病など体の内部における病気などが該当します。
- 精神障害
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うつ病、統合失調症、てんかん、認知障害、適応障害、発達障害など、精神に関与する障害などが該当します。
障害っていうてもいろいろあるねんな。
ワクチン後遺症で障害が残った場合も、申請しないとあかんで。
こういった障害年金を受給することができる怪我や疾患による障害のなかで、うつ病や統合失調症は精神障害として認定されるケースがあります。もちろん、コロナ過においてうつ病を発症した場合も障害の程度によって認定されれば障害年金を受給することが可能です。
障害の程度ってどんな状態?障害年金の金額にかかわる
障害年金は国民年金法施行令や厚生年金法施行令もよって定められている障害等級に該当しているかどうかによって受給できるかどうかが決まります。国民年金法では障害等級2級までとなっていますが、厚生年金法になると障害等級3級や障害手当金が受給できる範囲が幅広くなります。
加入している年金種類や障害の程度によって障害年金を受給できる資格や年金額に相違がありますが、うつ病の状態によっては障害年金を受給できる場合もありますので、障害の程度について知っておいて損はありません。
- 障害の程度1級
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身体の機能の障害や長期にわたる病状を必要とする症状があり、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものであること。
誰かの介護がなければ日常生活を送ることができないという状態にある障害です。入院や在宅介護などが必要でありベット周辺でのみでの生活に制限されているような状況になると障害等級1級に該当します。
- 障害の程度2級
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身体の機能の障害や長期にわたる病状を必要とする症状があり、日生活が著しい制限を受ける、または日常生活に著しい制限をを加える必要があるものであること。
日常生活を送ることが困難で、働いて収入を得ることができない状態にある障害です。自宅で簡単な食事を作ることができても、それ以上の活動ができなかったり制限されているなど、活動できる範囲が病院や自宅となっている状態であると障害等級2級に該当します。
- 障害の程度3級(厚生年金のみ)
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労働が著しい制限を受ける、または労働に著しい制限を加える必要があるものであること。
日常生活には支障はなくても、労働を行う上では制限があったり制限を加える必要がある状態であると障害等級3級に該当します。
障害等級だけじゃない⁉受給資格と年金額も知っておこう
障害年金の受給が可能となるのは障害状態が該当するだけでなく、加入している年金についても要件を満たしている必要があります。年金にはフリーランスや自営業者などが加入する年金の基礎部分となる国民年金と、会社員などが加入する年金の上乗せ部分となる厚生年金があります。
障害年金については、老齢年金のように加入していた経緯などが問われるのではありません。障害を残す原因となった傷病の時点でどんな公的年金に加入していたかがポイントとなりますので間違いのないようにししておかなければなりません。
年金の種類と受給できる要件とは?
障害年金には1級から3級に加え障害手当金がありますが、これは加入している公的年金が国民年金なのか厚生年金なのかによって受給できる要件が変わります。そして、どの公的年金に加入していたのかは障害を残す原因となった傷病の初診日がポイントとなります。
障害等級が1級や2級においては、基礎年金部分による受給となるため障害基礎年金という言葉を用られています。基礎年金の上乗せとなる厚生年金では、障害等級2級に該当しない場合は障害等級3級として障害厚生年金の受給が可能となり、さらに軽度の場合は障害手当金が該当することになります。
じゃぁ、もし退職したあとが初診日やったら3級とか手当金は貰われへんの⁉
そやねん。それだけ初診日って大事やねん。
- 障害基礎年金
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障害の程度が1級もしくは2級に該当し、国民年金の加入における要件が下記に当てはまる場合に障害基礎年金が支給されることになります。
- 初診日が20歳から60歳までの国民年金加入者
- 国民年金に加入できない20歳未満で初診日がある場合は20歳になったときの障害状態
- 初診日が国民年金の被保険者資格がなくなった60歳から65歳未満
原則として初診日から1年6ヶ月を経過した時点が障害認定日となり障害年金の支給対象となりますが、1年6ヶ月が経過する前に症状固定となった場合にはその時点で支給対象となります。
- 障害厚生年金と障害手当金
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初診日において厚生年金の被保険者であり、障害認定日から65歳までに申請した時点で該当する障害等級に応じて障害厚生年金または障害手当金を受給することができます。
- 障害等級の1級または2級に該当した場合は、障害基礎年金に上乗せして障害厚生年金を支給
- 障害等級2級よりも軽度な場合は、障害等級3級として障害厚生年金を支給
- 初診日から5年以内に病気や怪我が治り、障害厚生年金に該当しない軽度な障害が残った場合は一時金として障害手当金を支給
ここで忘れてはならないのは、障害年金を受給できるのは初診日の前日において納付要件など下記のいずれかを満たしている必要があることです。ただし、20歳未満で初診日がある場合には納付要件は必要とされていません。
- 初診日の前々月までの公的年金加入期間中の保険料納付または免除期間が3分の2以上あること
- 初診日が65歳未満で初診日の前々月までの1年間に保険料未納がないこと
やっぱ社会保険に入ってた方がええねんな。
そやな。いろんな場面で社会保険の恩恵があるからなぁ。
障害年金額ってどうやって決まる?年金額に影響する5つのポイント
受給資格を満たせば該当する障害等級によって障害年金を受け取ることができますが、5つの要件がポイントになって受給額の加算など受け取ることができる金額に影響が出る場合があります。
- 初診日において加入している年金種類
- 障害認定日における障害等級
- 障害基礎年金において18歳に達して初めて3月31日を迎えるまでの子、または20歳未満の障害等級1級ないし2級に該当する子に対する加算
- 障害厚生年金で加算される報酬比例の年金額
- 障害厚生年金において65歳未満の配偶者に対する加算
障害年金の基本は、国民年金における障害基礎年金です。初診日において厚生年金に加入していた場合には障害厚生年金における障害年金の加算、障害状態3等級の障害年金や障害手当金を受給できるということを改めて確認しつつ、令和4年度の障害年金額を確認してみましょう。
- 障害基礎年金
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障害基礎年金では、障害状態が1等級および2等級の場合に支給されます。さらに該当する生計を一にする子どもがいる場合は子の加算により受給額が増額されます。(※令和5年4月現在)
- 【1級】993,750円+子の加算額
- 【2級】795,000円+子の加算額
子の加算額は統一されており2人目までは1人につき228,700円、3人目以降は1人につき76,200円となっています。
- 障害厚生年金
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障害厚生年金では、障害等級が1級および2級となった場合の加算や障害等級3級や障害手当金が支給されます。また老齢厚生年金を受け取る権利がない65歳以下の配偶者がいる場合には、配偶者加算によって受給額が増額されます。
- 【1級】報酬比例の年金額×1.25+配偶者の加給年金額
- 【2級】報酬比例の年金額+配偶者の加給年金額
- 【3級】報酬比例の年金額(最低保障額は596,300円)
障害等級が1級および2級の場合のみ配偶者の加給年金として228,700円が支給されます(令和5年4月現在)。報酬比例の年金額は、年金の加入期間や加入中の報酬比などによって計算されます。
報酬比例の計算方法については日本年金機構「報酬比例部分」をご覧ください。
じゃあ、例えば障害2級やったら子の加算と配偶者の加算があるってこと?
障害1級と2級なら障害基礎年金と合わせて障害厚生年金の加算があるから、そういうことやで。
うつ病でも障害年金を貰える?等級ガイドラインと申請方法
うつ病で障害年金を受給することは困難だと聞いたことがあるかもしれませんが、必ずしも障害年金が受給できないということはありません。うつ病は様々な症状を引き起こすため、うつ病の症状が酷くなってしまうと自分ひとりで日常生活を送ることが困難となってしまう可能性が高くなります。
そのため障害年金の受給資格である1等級から3等級に該当するような症状がある場合には、診断書に記載された内容が障害認定基準を満たしていれば、障害年金の受給を諦める必要はありません。
うつ病には専用の診断書がある⁉日常生活能力がポイント
うつ病の治療には長い時間をかける必要があり、症状の軽減と悪化を繰り返しながら少しづつ寛解に向けて回復していくことになります。その治療期間は働くことが困難となり、場合によっては人の手を借りなければ日常生活を送ることができない場合もあります。
うつ病により障害年金を申請する場合には、精神の障害用の診断書が必要となります。この診断書の裏面には日常生活能力の判定と日常生活能力の程度に応じて障害等級における目安を記入することになっています。
うつ病における日常生活能力に対する制限の度合いにおいては、一人暮らしの生活であると仮定して4つに分けて判定されます。
- できる
- 自発的に(おおむね)できるが時には援助や指導があればできる
- (自発的かつ適正に行うことはできないが)助言や指導があればできる
- 助言や指導をしてもできない、もしくは行わない
- 適切な食事
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配膳などの準備も含めて適当量をバランスよく摂ることがほぼできるなど。
- 身辺の生活保持
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洗面、洗髪、入浴等の身体の衛生保持や着替え等ができる。また、自室の掃除や片付けができるなど。
- 金銭管理と買い物
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金銭を独力で適切に管理し、やりくりがほぼできる。また、一人で買い物が可能であり、計画的な買い物がほぼできるなど
- 通院と服用
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規則的に通院や服薬を行い、病状等を主治医に伝えることができるなど。
- 他人との意思伝達及び対人関係
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他人の話を聞く、自分の意思を相手に伝える、集団的行動が行えるなど。
- 身辺の安全保持及び危機対応
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事故等の危険から身を守る能力がある、通常と異なる事態となった時に他人に援助を求めるなどを含めて、適正に対応することができるなど。
- 社会性
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銀行での金銭の出し入れや公共施設等の利用が一人で可能。また、社会生活に必要な手続きが行えるなど。
日常生活能力の判定には、患者が医師に対しありのままを伝えることができているかが大きく作用することになります。医師に対して元気な様子を見せていたり、できないことでもできていると伝えていたりすると、診断書に正しく記入してもらえず障害年金の等級が軽くなったり、場合によっては受給できないなどの恐れがあります。
そういうのって、全部を伝えるのも難しいんちゃうん?
家族に説明してもらうっていうのもアリやで。
日常生活能力の判定とともに、診断書作成時点で日常生活の全般において制限を受ける度合いを包括的に評価したものとなり、いずれの状態に該当するかがポイントとなります。
- 精神障害(病的体験・残遺症状・認知障害・性格変化等)を認めるが、社会生活は普通にできる。
- 精神障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には、援助が必要である。
- 精神障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である。
- 精神障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である。
- 精神障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必要である。
このような診断書をもとに、うつ病による障害年金受給の可否がガイドラインを参考に決められることになります。うつ病が原因で障害年金を申請しようとする場合には、一度ご自身やご家族で日常生活能力にかかわる状態を精査してみてはいかがでしょうか。
うつ病でも受給できる!障害年金の請求申請はどうすばいい?
うつ病における闘病生活のなかにおいては、闘病中である本人が障害年金の請求申請を行うことは困難なことだと思います。しかし働けなくなってしまった場合には、生活費の問題などが浮き彫りとなり場合によってはうつ病で苦しむ本人を更に追い込むことに繋がりかねません。
障害認定日となる初診日から1年6ヶ月が経過した時点でも、うつ病により働けない状態が続いている場合には障害年金の請求申請を行うことも視野に入れておく必要があります。
身体に変調を感じ最初に内科などを受診する人は少なくないと思います。そこで自律神経失調症などの診断を受けその後に心療内科を受診した結果、うつ病だっというケースも多々あります。こういった場合には初診日は心療内科ではなく、内科が初診日ということになるので注意が必要です。
最初に受診した病院に受診状況等証明書を記入・証明してもらうことを間違えないようにしてください。
主に2つの書類を提出する必要があり、医師の証明については通院中である病院先とは限らないケースがあるので注意が必要です。
- 最初に受診した病院に受診状況等証明書を記入・証明してもらう
- 自分で病歴・就労状況等申立書を記入する(家族が記入することも可能)
もし初診病院で受診状況等証明書を発行してもらうことが困難な場合には、受診状況等証明書が添付できない申立書に記入して提出することも可能ですが、障害年金を受給するためにはできるだけ受診状況等証明書を提出した方が良いでしょう。
近くにある年金事務所または居住する市区町村役場の窓口に書類を提出します。その際、様々な提出書類の指示がありますので漏れがないように気をつけなければなりません。
初診日や保険料納付の確認が行われたのち、いつの時点での障害状態についての診断書が必要かの指示があるので忘れずに確認しておいてください。
現在通院している病院に精神の障害用の診断書を記入・証明してもらう必要があります。この診断書は記入してもらったあと、必ず日常生活能力における記載内容を確認し現状と相違する点がないかを確認しておいてください。
年金事務所または市区町村役場の窓口に、年金請求書や診断書、マイナンバーカードや通帳のコピーなど必要な書類を提出しますが、書類にもれがないようにしなければ障害年金額に大きな影響が出てしまう恐れがあります。
年金請求書は初診において加入していた年金が国民年金か厚生年金かによって請求書が相違します。また、子や配偶者による加算を請求する場合は生計同一関係に関する申立書の提出が必要です。
診断書や必要書類に不備がない状態でも、障害年金支給の決定において審査が終わるまでは約3ヶ月程度が必要とされています。急ぐ気持ちはわかりますが、決定通知が届くのを待っておいてください。
障害年金受給の申請を行った場合には、提出した書類はコピーをとり保管しておいた方が良いと思われます。もし障害年金が不支給決定となったり、希望している等級が得られなかった場合には再審査を申し立てすることができ、書類のコピーを再審査の際の資料とすることができます。
【まとめ】うつ病でも状態によっては障害年金の受給が可能
障害年金は身体に関する障害だけでなく、うつ病など精神疾患でも障害年金を申請することが可能です。コロナ過によってストレスなどからうつ病を発症し、治療が長期に渡る場合には障害年金の受給も視野に入れて考えてみることも必要です。
- 障害年金における3つの障害状態
- 受給資格と年金額
- 日常生活能力に関する診断書のポイント
- 障害年金における加算額
- うつ病における等ガイドラインの確認
- 障害年金の申請方法
障害年金の申請は複雑で様々な提出資料が必要となり、場合によっては年金事務所や市区町村役場に何度も足を運ばなければならないケースもあります。
うつ病は長期にわたる治療や療養が必要です。自分ひとりで日常生活を送ることが困難なほどの状態に陥ってしまった場合には家族の負担は大きなものとなります。
障害年金の申請を検討する場合、障害年金に特化した社会福祉労務士へ相談し申請を依頼すれば、安心して障害年金の支給決定を待つことができます。相談無料や受給できなかった場合の報酬は不要という社会福祉労務士もありますので、うつ病に苦しむ家族も一緒に障害年金について考えてみてはいかがでしょうか。
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