社会保障制度ってなに?生活に大きく関わる4つの柱を知り必要に応じて利用しよう

セーフティネットという言葉を聞いたことはありますか?
様々な危機に対してリスク回避や損害を最小限に抑えるために準備しておく仕組みをセーフティネットと言いますが、私たちの生活を守ってくれる日本のセーフティネットが社会保障制度にあたります。
社会保障制度は4つの柱に分かれ、それぞれの柱は様々な制度が組み込まれ私たちの生活を守ってくれています。
- 年金・医療・介護を支える社会保険
- 安心できる生活を支える社会福祉
- 最低限の生活を支える公的扶助
- 健康な生活を支える保健医療・公衆衛生
生きていく上で誰もが欠かすことのできない社会保障ですが、制度を利用する場合には自分で手続きが必要となるため一度は制度についてよく目を通しておき、もしものときには生活を支えるために利用できるようにしておくことが大切です。
【1つ目の柱】強制加入⁉生活の困難を助ける社会保険制度

人が生きていくなかで生活をすることが困難となってしまう怪我や病気などを始めとして、出産・失業・老齢・障害・死亡などに備えるために加入すべきものが社会保険となっています。
社会保険制度には5つの機能が存在し、加入義務が発生した場合にはそれぞれに対する保険料の支払いが求められることとなります。
- 公的医療保険制度
- 公的年金制度
- 公的介護保険制度
- 雇用保険制度
- 労災保険制度
すべての人が強制加入となる公的医療保険制度とは?

0歳の赤ちゃんからお年寄りまで、国民皆保険制度という名のもとにすべての人に加入が義務付けられているものが公的医療保険です。
すべての人が日本国内において場所を問わず平等に医療を受けることができるという制度となっており、大きくわけて国民健康保険と社会健康保険に分かれています。また、75歳以上になると後期高齢者医療制度へ加入することになります。
75歳までは雇用されて働いているなど環境によって人それぞれ加入する種類が異なる健康保険ですが、医療を受ける際の自己負担額は年齢や収入に応じて決まっています。

国民健康保険と社会健康保険では、保険料の負担額をはじめとして傷病手当金や出産手当金などの制度において違いがあるので、自分自身が加入している健康保険の制度については良く理解しておく必要があります。

老後の生活を確保する公的年金制度とは?

20歳を迎えたら加入義務が生じる公的年金制度ですが、加入してから最低でも60歳になるまでは年金保険料を支払わなければなりません。
公的年金制度への加入方法には2つあり、国民年金と厚生年金のどちらかへの加入となりますが働き方や生活環境によって加入すべき公的年金や保険料の負担方法が変わりります。

企業などに属して給与を受け取って働く会社員は、厚生年金に加入し第2号被保険者となります。保険料は標準報酬月額によって計算され、所属する会社との労使折半によって支払うことになります。


公務員も厚生年金なん?



平成27年10月から共済年金は厚生年金と統一されてんねん。
第2号被保険者である会社員に配偶者がいれば、その配偶者は第3号被保険者と呼ばれ国民年金に加入しますが、第2号被保険者となっている会社員の配偶者が保険料を支払ってくれているので、保険料を負担する必要はありません。
ただし、第3号被保険者であるためには年収130万円未満である必要がありますが、2022年10月以降は年金制度の改正によって働く環境によっては106万円以上で厚生年金に加入する義務が発生しますので注意が必要です。


第2号、3号に該当しない自営業者やフリーランス、農業や漁業者、無職の方々は第1号被保険者として国民年金に加入することになります。国民年金保険料は居住する地域の市区町村に納めることとなり、毎年保険料の見直しが行われています。
国民年金保険料は日本年金機構「国民年金保険料」からご確認いただけます。
国民年金や厚生年金についてもう少し知りたい思われる方は、2022年4月の年金制度の改正についての記事の最初で少し説明しているので、ぜひ参考にしてみてください。


みんなで支え合う公的介護保険制度とは?


2000年に設立されたばかりで、40歳以上になると加入しなければならないものが介護保険制度です。年齢によって第1号被保険者と第2号被保険者に分かれて加入することになっています。
基本的には高齢者を社会全体で支えるという目的であるため、年齢によっては同じ介護状態であっても該当しないというケースがあることを忘れてはなりません。


40歳から65歳未満の方は介護保険の保険料を払っていても、がんや骨粗しょう症など老化を原因とする16種類の特定疾病でなければ介護保険を利用して介護サービスを利用することはできません。
介護保険による特定疾病については厚生労働省「特定疾病の選定基準の考え方」をご参照ください。
失業などから生活を守る雇用保険制度とは?


雇用保険は事業者に対して強制的に加入すべき制度となっており、会社員などの労働者は雇用保険に加入することになります。
生活を安定させることを目的としている雇用保険制度では、失業などにより再就職に向けて支援する様々な給付金を受け取ることができるものとなっています。
- 一般求職者給付金
- 高年齢雇用継続基本給付金
- 短期雇用特例給付金
- 日雇労働者給付金
- 就職促進給付金
- 教育訓練給付金
- 高年齢雇用継続給付金
- 育児休業給付金
- 介護休業給付金
雇用保険については厚生労働省「雇用保険制度の概要」から確認することができます。
給付金受給の手続きを行うことができるのは、全国のハローワークとなっています。手続きには何度もハローワークに足を運ばなければならないことも考えると、お近くのハローワークで手続きを行った方がよいと思います。
再就職までの生活保障となっているため、心身共に働くことができるよう健康であることが必要です。療養中で働けない場合には求職者給付金の受給手続きができないということを忘れてはなりません。
業務上の怪我や病気から守る労災保険制度とは?


業務中だけでなく通勤途中に対する病気や怪我、障害や死亡した場合には労働者やその家族に給付金が支払われる労災保険制度は、事業者が保険料を負担し加入することになっています。
休職しなければならなくなった場合には、医療費の自己負担もなく給付日額が給与の約80%となっているため、傷病手当金を貰って休職よりも保障内容は手厚くなっています。
労災保険による補償内容は厚生労働省「労災補償」より確認することができます。
【2つめの柱】立場が弱い人たちの生活をサポートしている社会福祉制度


子どもや高齢者、母子や心身障がい者などの社会的に弱い立場である人々の生活をサポートすることを目的とした制度が社会福祉制度となっています。
人権や生存権を重視するという観点から支援や介助が必要とされている方々への援助を行っている公的サービスです。
社会福祉制度には生活のサポートをするために、4つの項目によって該当する方を対象にサポートできるような公的制度となります。
- 児童福祉
- 母子及び父子並びに寡婦福祉
- 高齢者福祉
- 障害者福祉
子どもを育みやすい環境を整えるための児童福祉とは?


児童福祉による施策は多岐に渡り、受けることができるサービスは8つの施策に分けて行われています。
児童手当や児童扶養手当などを始めとして、近年増加傾向にある児童虐待についても、この児童福祉による施策で対応されるようになっています。
- 保育子育て支援施策
-
- 保育所、認定こども園
- 保育施策等促進事業
- 一時預かり事業
- 地域子育て支援拠点事業
- 家庭的保育事業
- ひとり親家庭施策
-
- 児童扶養手当
- 母子家庭等就業、自立支援事業
- 子育て短期支援事業
- 母子生活支援施設
- 社会的擁護施策
-
- 児童相談書
- 児童家庭支援センター
- 乳児院
- 児童養護施設
- 児童自立生活援助事業
- 小規模住居型児童養育事業
- 障害児支援施策
-
- 特別児童扶養手当
- 障害児通所支援
- 障害児入所施設
- 児童発達支援センター
- 障害児相談支援事業
- 障害福祉サービスの措置
- 非行・情緒障害児施策
-
- 児童自立支援施設
- 児童心理治療施設
- 母子保健対策等
-
- 健康診査と保健指導
- 訪問指導
- 母子健康手帳
- 小児慢性特定疾患治療研究事業
- 助産施設の設置
- 健全育成
-
- 児童厚生施設
- 放課後児童健全育成児童
- 児童手当
- 児童委員
- 児童虐待対策
-
- 市町村
- 児童相談所(一時保護)
- 福祉事業所
- 保健所
- 乳児家庭全戸訪問事業
- 養育支援訪問事業



めっちゃ多いな。



子どもらが生きていけるための税金なら納得して払える気もするな。
ひとり親世帯への援助、児童福祉を促進する母子及び父子並びに寡婦福祉とは?


社会的・経済的に不安定となりがちな母子や父子家庭など、ひとり親世帯に対して援助を行うことで、経済的な自立や扶養されている子どもへの福祉を増進させるための制度となっているものが、母子及び父子並びに寡婦福祉制度となっています。



父子って言葉なんか前から入ってたっけ?



2014年から父子って言葉が入ってん。
- 児童扶養手当
- 母子父子寡婦福祉資金貸付金制度
- 母子生活支援施設等
- その他の母子福祉に関する対策
これらの福祉制度によるサービスを受けることができたとしても、満足な生活が送れるとは限りません。働きながらプラスアルファの補足として考えておく必要があります。
公的介護保険と表裏一体となる高齢者福祉制度とは?


サービスを受けるための費用負担に対して給付される制度が公的介護保険がコインの表なら、コインの裏はサービスそのものを受けることができる制度が高齢者福祉制度です。
高齢者福祉制度では5つのサービスを受けることができます。
- 老人福祉施設
- 訪問介護
- 認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
- 複合型サービス福祉事業
- 日常生活用具給付等事業
現役世代が納税し高齢者を支える福祉制度によって、様々なサービスが提供されるようになっていますが、超高齢者社会となった日本では今後の高齢者福祉制度は財源が厳しくなってきていることも事実です。



俺らが高齢者になったらどうなってるんやろうな。



現役世代の間から制度改定に対して敏感になっとかないとあかんってことやな。
障がいを持つ人たちの自立を支援する障害者福祉制度


以前は障がい種類ごとに福祉制度がありました。しかし従来からの通院医療公費負担制度・支援費制度に変わって、原則としてサービス費用を1割負担とする障碍者の福祉サービスが障害者福祉制度として1つに絞られることになりました。
障がい者は身体障害・知的障害・精神障害の3種類の障がい者に分類され、3つの区分に分けて障害者サービスを受けることができます。
- 介護給付
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在宅介護や生活介護など、介護の支援を受けることができます。
- 訓練等給付
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自立訓練や就労移行支援など、訓練等の支援を受けることができます。
- 地域生活支援事業
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移動支援など利用者の状況に応じた支援を受けることができます。
介護や支援などの福祉サービスを受けるためには、お住まいの市町村役場で利用申請を行う必要があります。その際には受けることができるサービスの現物支給であるということを忘れてはなりません。
【3つめの柱】最低限の生活を保障して自立を助ける公的扶助


生活の困窮に対し程度に応じて必要とされる保護を行い、健康で文化的な最低限の生活を保障し自立を促す公的扶助として生活保護制度があります。
基本的には生活保護の申請は福祉事務所となりますが、福祉事務所の設置がない町村なら町村役場で申請することが可能となっています。
生活保護には8種類の扶助があり、困窮の程度によって1つだけでなく複数の扶助を併用して受けることが可能となります。
- 生活扶助(食費・被服費・光熱費など)
- 教育扶助(学用品費など)
- 住宅扶助(家賃・地代など)
- 医療扶助
- 介護扶助
- 出産扶助
- 生業扶助(生業費・技能習得費・就職支度費)
- 葬祭扶助
生活保護による生活水準は年齢や世帯厚生などのほか、お住まいの地域によっても異なり毎年改定されています。生活保護については厚生労働省「生活保護制度」より確認することができますが、制度利用しようと考えている方は福祉事務所でまずは相談してみることが必要です。



働かれへんようになって生活できんようにならないとあかんってことやろ?究極やな・・・



低所得になった場合にも利用できる制度もあるで。
低所得世帯を含め失業などによる所得減少に対する対策も公的扶助では行われています。
- 社会手当制度
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社会保険と生活保護制度との中間的性格となる現金給付を行っている。
- 児童手当
- 児童扶養手当
- 特別児童扶養手当
- 特別障碍者手当
- 障害児福祉手当
- 公営住宅制度
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母子世帯、高齢者、心身障がい者など低所得者に対して住宅を提供している。
- 生活福祉資金貸付制度
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低所得世帯や高齢者、高齢者、失業者世帯を対象に低利子または無利子で生活資金を貸し付けしている。
- 総合支援資金
- 福祉資金
- 教育支援資金
- 不動産担保型生活資金
【4つめの柱】医療サービスや食品などのの安全保険を行う医療・公衆衛生


すべての人々が健康に生活を送るために、予防や衛生活動において様々な活動を行うものとしている制度が医療・公衆衛生です。
新型コロナウィルスの拡大により保健所が主体となって対応をおこなっていたことは記憶に新しいと思いますが、医療・公衆衛生では保健所や保険などが中心となって公共の場における整備や環境予防対策などが行われています。
- 感染症予防対策(予防接種など)
- 健康診断
- 公害対策
- 下水道の整備
- ペットの保護活動



Venusちゃんは予防接種には嫌な思いしかないやろ?



マジで予防接種は嫌いになったわ!


【まとめ】生きていくための社会保障制度「4本の柱」を覚えておこう


4本の柱で成り立っている社会保障制度は怪我や病気、障害や介護などに加え出産や死亡、失業、貧困などにより様々な困難から人々における一定の生活水準を保障するために国や公共事業などが行っている制度となっています。
人々が安心して生活を送ることができるよう支援するために社会保障制度は存在していますが、必要となった場合には自分で手続きを行う必要があるので、一度は制度に関心を向けてみておくことが大切だと思われます。


このように生きていくための制度は、知られているようで意外と知られていないことが多いように感じます。社会保障制度では様々なことで、私たちの生活を支えてくれているということを覚えておいてください。
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