働く主婦には5つの壁が存在する⁉税金や扶養内など効率よく稼ぐために覚えておこう
新年度の始まりによって家庭の環境が変わったりすると、専業主婦の方も外に出て働き始める方が増えてきますが、これから働こうとしている方はどれくらいの収入を考えていらっしゃるのでしょうか。
働こうとする主婦のなかには、自分自身で欲しいものがあったり、お小遣い稼ぎとして働くケースもありますが、なかには夫の経済負担を少しでも軽減できるように働くことを決める主婦もいらっしゃいます。
働くことになった主婦からは、扶養内で働くため稼ぎすぎないように気をつけているという言葉を耳にしますが、扶養内という意味がどのような意味の扶養内を希望しているのかによって稼ぐことができる収入が変わってきます。
働く主婦が覚えておくべきことは、目的に沿った稼ぎ方ができるように働くことです。扶養内という目的だけでなく、税金への対策などもふまえて働く主婦の収入によって出現する5つの壁を知って働き方の役に立てていただきたいと思います。
働いた分は収入アップに繋げたい⁉100万円と103万円の壁
家庭の全体的な収入アップを考えている場合、主婦が働いた給与からは税金が引かれることなく全額収入に繋げたいと思われる方が多いようです。
確かに税金が引かれたら手取りが減るもんなぁ…
給料全額を手取りにしたかったら非課税で働くしかないねんなー。
全額を収入に繋げるということは、いわゆる非課税で働くということになるのですが税金と聞くと所得税だけを意識される方が多いように感じます。収入に対して課税される税金には、所得税だけではなく住民税も存在しているということを忘れないようにしなくてはなりません。
存在が薄いの⁉忘れられがちな住民税による100万円の壁
なぜ住民税はこんなにも存在が薄いのでしょうか。おそらく年収から計算される所得額が少なければ年間にしても数千円の住民税となるため、そこまで気にする人が少ないことが理由の1つではないでしょうか。
住民税は収入に応じて計算されることになりますが、そもそも住民税は居住している市区町村の自治体によって計算されています。そのため各自治体によって定められている住民税における非課税基準となる年収に違いが生じていることは確かですが、ほとんどの自治体が年収100万円を超えると住民税が課せられるようになっています。
住民税は均等割と所得税から成り立って計算され課税されることになります。そのため年収が100万円を超えると住民税を支払う義務が発生するため、主婦であっても年収100万円を超える稼ぎがあると給与の全額を手取りにすることができなくなるため、100万円の壁と言われています。
さらに税金がかかるの⁉103万円の壁を超えると所得税
住民税が年間数千円程度であれば家庭に入る収入の方が多くなるため、100万円の壁をあまり気にする人は少ないかもしれません。100万円の壁よりも存在が大きいと言えるのは皆さんがよくご存じの103万円の壁ではないでしょうか。
住民税が課税されるとはいえ、ほぼ全額に近い手取り収入によって家庭の収入アップに繋がる100万円の壁を越えてしまった場合、次に気をつけるべきものは103万円の壁です。100万円と103万円とでは、たったの3万円の違いとなりますがこの3万円の違いで所得税が課税されるかどうかが決まります。
所得税を払わなあかんのって103万円以上やったんや⁉でも何で103万円なん?
給与所得って聞いたことあるやろ?それで考えたら納得できるかもな。
主婦が外に出て働こうとする場合、ほとんどの方が給与を受け取ってお金を稼ぐということになると思います。給与を受け取るということは、所得税を計算する際には会社員のように働くための経費という意味で与えられている給与所得控除が適用され所得税の計算されるようになります。
さらに専業主婦で働いていなかった時とは違い、働き出した主婦自身も所得税の計算をすることになるため基礎控除を入れて計算することとなります。この基礎控除の金額は納税者本人の所得額が2,400万円以下であれば48万円の基礎控除を受けることがきます。もし2,400万円以上の所得があるという主婦がいらっしゃたら基礎控除額が変わりますので国税庁:基礎控除ご参照ください。
主婦が働いて稼いだ金額からは、この基礎控除と給与所得控除を差し引いて年間の所得額が決まり所得税の計算をされていきます。
- 給与所得控除額の最低額55万円を年収から差し引いて所得額が決まる
- 本人の所得額が2,400万円以下なら基礎控除48万円を所得額から差し引く
- 55万円と48万円の合計103万円以下なら所得額はマイナスとなり非課税
このように給与所得控除と基礎控除の最低ラインを足した金額が103万円となるため、103万円以上の年収がなければ所得はゼロということになり、所得税は課税されずに家計の収入アップに繋げることができるようになります。
社会保険の扶養から外れる⁉106万円と130万円の壁
働く人にとって大切なのは年収よりも給与の手取り額だと思います。もちろん働く主婦も例外ではなく、家計の足しにしようとしている主婦にとっては、おそらくご主人よりも手取り額に注視されている方が多いのではないでしょうか。
俺は一応気にしてるで⁉手取りは大事やからな!
主婦はもっと気にしてるねん。支払いも考えなあかんからな。
はい…すんません・・・
働いた給与に大きな影響を与えるのは社会保険に対する保険料ですが、社会保険には健康保険料や厚生年保険金料、40歳以上になると介護保険料などが加わってきます。つまり、働く主婦も会社員と同様の働き方であるとみなされてしまう年収のラインが106万円と130万円の2つとされています。
社会保険に影響⁉存在が薄い106万円の壁は何が起きる?
100万円、103万円の次は106万円の壁となりますが、106万円を超えると気にしなければならない対象に変化が起きるので、働く主婦にとってはとても重要な壁となります。
106万円の壁とはズバリ厚生年金への加入に対する義務が生じるかどうかが問題の焦点となっています。年収が106万円を超え厚生年金に加入することになれば、自動的に社会保険に加入することとなり夫が加入する健康保険の扶養から外れ、働いている主婦は自分で社会保険に加入しなければならなくなります。
社会保険に加入すると給与総額に対して約14%程度の保険料が差し引かれることになり、手取り額が減ることになってしまいます。しかし106万円の壁に該当するかどうかは働いている環境が大きく関係することになり、働く環境によっては同じ106万円の年収であっても厚生年金への加入を免れることができる場合があります。
- 勤務先の従業員が501人以上
- 週平均の所定労働時間が20時間以上
- 年収が106万円以上(月収8万8,000円以上)
- 雇用見込み期間が1年以上
- 学生ではない
これら5つの要件に1つも当てはまらなければ106万円の壁を意識する必要はなく、住民税や所得税を支払う義務は生じますが主婦自身が社会保険に加入する必要はありません。夫の社会保険の扶養に入ったまま働くことができるので収入のほとんどは家庭の収入アップに繋げることが可能です。
ただし2022年10月以降は、この106万円の壁に大きな変化が起こることになり、更に2年後の2024年10月からは106万円の壁に対する要件が厳しくなるため、働く主婦にとっては今から気をつけておかなければなりません。
社会保険の扶養から外れてしまう⁉立ちはだかる130万円の壁
働く主婦が年収130万円の壁を超えると、主婦自身で社会保険に加入しなければならなくなります。そうなると当たり前のことですがご主人が加入する社会保険の扶養からは外れることになります。国民健康保険などと違い社会保険では扶養制度が存在するため、ご主人の加入する社会保険では扶養者に対する保険料は発生していません。そのため、働く主婦自身が自分で社会保険に加入することになっても、ご主人の社会保険料が安くなるわけではありません。
こうしたことから、年収130万円の壁を越えてしまうことによって働く主婦にも社会保険料が発生し、年収における手取り額は減ってしまうことになります。もし社会保険の扶養内で働こうとする場合は、この130万円の壁に注意して働かなくてはなりません。
ここで注意しておきたいのは、働く主婦が務める先で社会保険がないというケースです。もし夫が加入する社会保険の扶養から外れ主婦の勤務先に社会保険制度がない場合には、主婦は自分で健康保険や年金に加入する必要があるため、国民健康保険と国民年金へ加入することになります。社会保険は労使折半で保険料が半額となりますが、国民健康保険や国民年金の保険料は全額実費負担です。
働く主婦の年収が130万円を超えようとしている場合には、健康保険や年金への保険料負担が社会保険となるのか国民保険になるのかを考え、それぞれの保険料負担がどれくらいになるのかを考えておくことが重要です。
税金の扶養に大きく影響⁉150万円の壁により夫の税金が増える?
130万円の壁までは、たとえ壁を超えたとしてもご主人への影響は少なくてすみますが働く主婦が年収150万円を超えた場合には、夫の支払うべき所得税や住民税に大きな影響を与えてしまうことに繋がります。
え?なんで旦那にも影響すんの⁉
150万円を超えると税金の扶養控除額が減っていくねん。
所得税には様々な計算過程がありますが、そのなかには配偶者控除や配偶者特別控除と呼ばれる所得扶養控除が存在します。これら2つは配偶者の年収によって受けることができる控除の種類や控除額が決まりますが、このうちの1つである配偶者特別控除を満額受けることができるボーダーラインが150万円の壁となって立ちはだかっているのです。
年収が夫の所得税に影響⁉主婦の年収による配偶者(特別)控除
ご主人の所得税や住民税は年収から計算されていきますが、そのなかで受けることができる所得控除のうち、主婦が働く場合には配偶者控除と配偶者特別控除を知っておくことが最も重要となります。
ご主人が所得税の計算時において配偶者控除を受けることができるのは、働く主婦の年収が103万円以下である場合となり、配偶者控除の金額は13万円から38万の間でご主人の所得額によって変わります。
ご主人の所得額 | 一般の配偶者控除額 | 老人配偶者控除額 |
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超~950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
950万円以下~1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
働く主婦の年収が103万円以上を超えた場合には、上記の配偶者控除に変わって配偶者特別控除をご主人は利用して所得控除を受けることになります。下記の表は働く主婦の所得金額をもとにご主人の年間所得がどれくらいかによって、ご主人が利用できる配偶者特別控除額を知ることができます。
働く主婦の所得金額 | 900万円以下 | 900万円から 950万円以下 | 950万円超から 1,000万円以下 |
48万円超95万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
95万円超100万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 |
100万円超105万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 |
105万円超110万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 |
110万円超115万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 |
115万円超120万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 |
120万円超125万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 |
125万円超130万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 |
130万円超133万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
年間所得が990万円以下のご主人が配偶者控除と同じ金額となる配偶者特別控除を38万円利用しようとする場合、働く主婦は所得額が95万円以下である必要があります。主婦の所得とは年収から給与所得を差し引いて計算した金額が給与所得と言われるものになります。
年収-給与所得控除=給与所得額
これを逆算してみると、所得額95万円と給与所得控除55万円を足した金額150万円が、所得95万円に相当する年収であるということがわかります。このように働く主婦が給与以外に所得がなければ、単純に年収150万円を超えると所得額が95万円を超えるため、ご主人は配偶者特別控除を受ける際には満額の38万円ではなく、働く主婦の給与から計算された配偶者特別控除の額を利用することになります。
これが150万円の壁って呼ばれる由来やねん。
なるほどな~。150万円って適当な数字の壁じゃんないねんな。
当たり前や。適当に名前はつけへんやろ…
少しぐらいと甘く見ていると損をする⁉ご主人の税率がアップ⁉
配偶者特別控除だけを見てみると、満額の場合は配偶者控除と同額となる38万円です。もし働く主婦の所得が少し上がってしまい105万円となった場合には配偶者特別控除は31万円となり、その差は7万円となります。
ご主人が所得税の計算時に利用する配偶者特別控除の金額において、主婦の所得の違いで出る控除額の差がたった7万円と考えるか、7万円もの違いと考えるかによって運命の分かれ道になってしまう可能性があるので、よく覚えておいてください。
Venusちゃん、それは大げさすぎるやろ。
意外とそんなことないんねんで。
所得税の計算をする際には給与所得額から、社会保険料控除や生命保険料控除、配偶者特別控除などの様々な種類の所得控除を差し引いた結果、その金額に対して税率や税率控除を用いて計算されます。この際の税率においてボーダーラインが存在しており、場合によってはこのボーダーラインで1円の差で税率が10%も上がり支払うべき税金が多くなってしまうというケースが多々あります。
俺、この記事で説明してもらったん今思い出したわ…ほんまに運命の分かれ道やな。
家計の足しにと思って働いたつもりが、少しの年収の差によってご主人の税金が上がってしまうようなことがあっては本末転倒です。主婦が働く際には150万円の壁についても十分理解し、ご主人の年収額とも相談して働く必要があります。
【まとめ】主婦は5つの壁に注意して目的を持って働こう
働く主婦にとって、家計の足しにしようとする年収に対して5つの壁が存在しています。
- 住民税や所得税など非課税内で働く
- ご主人が加入する健康保険の扶養内で働く
- 税金に対する扶養内で働く
年収は100万円、103万円、106万円、130万円、150万円の5つの段階で様々な制約が生まれ、これら5つの壁を知らなければ、家計の収入アップのために働き出した主婦にとって稼ぐことの意味がなくなってしまうことに繋がります。働くことで支払いや出費が多くなり、家計の収入ダウンにつながってしまった場合には目も当てられません。
- 100万円の壁
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住民税が課税される
- 103万円の壁
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所得税が課税される
- 106万円の壁
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働く環境により自身で厚生年金への加入が必要
- 130万円の壁
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社会保険の扶養から外れる
- 150万円の壁
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税金の扶養控除(満額)から外れる
主婦が働いて得た収入が多くなればなるほど、段階に応じて様々な制約が生まれることになり、働く主婦の収入すべてが家計の足しになるわけではなくなります。
ご主人の収入だけで生活に支障がなく小遣い稼ぎ程度に働くのであれば103万円までの年収を目途とするという考え方もあれば、生活を維持するために夫婦共に働くつもりなのであれば、5つの壁にとらわれることなく主婦もフルタイムで働くという考え方もあります。
主婦が働く場合には働く理由や目的を十分考えておき出現する5つの壁への理解を深め、ご主人の年収も踏まえて働き方を十分考えておくことが大切です。
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